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剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
第二話 家族
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味があるので、ぜひ参加させてもらうぞ」

 士郎は目があった瞬間に反射的に視線を逸らしてしまうほどの引きつった笑みを浮かべる公爵の姿が。友好的を現すかのように両手を広げて近づいてくる公爵のぶっとい血管が浮かぶ右手には杖の姿がある。友好というよりも、逃がさないようにしているとしか見えない公爵に、結構ですとばかりに上げた顔を、士郎は小さく笑みな浮かべながら首を横に振った。しかし、公爵は止まることなく、ぶっとい血管が浮き出た手で杖を握り締めながら作り物のような笑顔を顔に貼り付けて近づいてくる。士郎は「最初からそのつもりだっただろ!」と言うツッコミを入れたい衝動を必死に抑えながら少しでも離れようとばかりに足を後ろに動かすが、直ぐに踵にソファーが当たって動くことさえままならない。
 士郎の立つ位置から左右斜めよりゆっくりと歩いてくる(間合いを詰めてくる)相手を前に、士郎は部屋を見渡し逃げ出す方法や理由が見つからないと分かると、顔を上げ大きく溜め息を吐き……。





「…………はぁ……なんでさ」





 肩を落とした。


 

 






 晩餐は盛大に行われ、様々な料理を前にルイズたちは良く食べ、笑いあった。女王からの罰に不安に震えていたギーシュやマリコルヌは、お咎めなしと聞き安心し、思い出したかのように湧き上がる食欲に身を任せ腹回りが倍になるほど出てくる料理を食いまくっていた。食事の合間に上がる話題には主に士郎の話が上がり、その度に士郎はカリーヌから色々な質問を投げかけられていた。ルイズたちは、自分たちを守るためとは言え、カリーヌを取り押さえたことに不安を感じていたが、蓋を開けてみればどうということもないどころか、随分と士郎の事をカリーヌは気に入っていたのである。夕餉が始まるまでの約一時間余りの間に何があったのか、満足気な表情をしたカリーヌは、何処となく疲れた様子の士郎に機嫌よく話しながら晩餐会室に入ってきた。何故かそこにはルイズの父親である公爵の姿はなく、カトレアが皆を代表して聞いてみると「年甲斐なくはしゃいで腰を痛めたので今は部屋で休んでいます」との返事が帰って来た。その言葉でその場にいた皆は大体の事情を察し、カリーヌの後ろに立つ肩を落として引きつった笑みを浮かべる士郎に同情の視線を送ったのだった。
 食後のお茶を飲み終える頃には、満腹感や疲れから眠気が襲ってきたのか、口元を抑えアクビをする者が増えてきた。夜も更けてきたと言うことで、晩餐が終わり、皆それぞれ晩餐会室を出て行き始める。行き先は各自にあてがわれた部屋。晩餐会室を出たルイズたちは、それぞれ挨拶をすると自分たちの部屋へと足を向ける。そんな中、自分の部屋に向かうことなく、一人廊下に設けられたバルコニーに立ち、星空を見上げる者がいた。

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