第十一章 追憶の二重奏
第二話 家族
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聞く。額に噴き出した汗を拭くことも出来ず、士郎はただ乾いた笑い声を上げた。
「は、ハハハハ……な、何を言って―――」
「中庭の池の上……小船の上であなた、ルイズに何をしていたかお忘れに?」
ひゅっ、という鋭く息を吸い込む音を士郎は耳にした。それは二つ。近くと遠く。近いのは自身の口元から、遠いのは……
「―――――――――ッッッ!!??」
杖を握る手だけでなく全身を震わせながら顔を真っ赤にした、視線で人を殺せたらとばかりに目を剥いて睨んできている公爵から……。
「………………………………」
「ワタクシハナニモミテハイマセン」とばかりに自然な動きで公爵から視線を外した士郎は、完全に引きつった笑みをカリーヌに向けて乾き切った笑い声を上げた。
「ハハハッハハハ…………失礼ですが、見間違えでは?」
「わたくしが耄碌しているとでも?」
「いえ、そのようなことは……ぁ」
慌てて否定した士郎だが、自分が口にした言葉を理解すると、思わず一歩後ろに足を下げてしまっていた。
その姿を炯々と光る目でカリーヌは見つめていたが、不意に目を閉じると小さく首を左右に降り始めた。
「……別に今更あのことについてあなたに問い詰めようという気はありません」
「そんなッ!?」という悲哀やら怒りやらが混じった声がドアの近くから聞こえたが、カリーヌが振り向き一睨みするとそれは急速に小さくなった。顔を前に戻したカリーヌは、自分の杖を抜き放つと、士郎の眼前にその切っ先を突きつけた。
「実のところ、あなたの噂は以前から耳にしていました。何万もの軍をたった一人で撤退に追い込んだと……その時の功績により陛下から新たな近衛騎士隊の隊長を命じられたと……そんな人物の首を独断ではねるわけにはきません。ですので、その点だけは安心なされて結構です。が、しかし、それとこれとは話は別です。わたくしはあなたの実力の程を知りたいのです。先程は油断をして取り押さえられましたが、今度は油断はしません。あなたが陛下の近衛騎士として、ルイズの使い魔として相応しい実力を持っているか調べさせていいただきます」
爛々と光る目で刺し貫かんとしているかのような視線を向けてくるカリーヌの姿に、士郎は
―――どうして俺の周りにはこの手の女が多いんだッ?!
その眼光と立ち居振る舞いから何処かの撲殺バーサーカー女のことを思い出しながら内心で悲鳴を上げる。
つまるところは自分が戦いたいだけじゃないのかこの人はっ!?
助けを求めるように士郎の視線が部屋の中を回るが、とっくに皆は部屋の外に出ていってしまっている。部屋の中に残っているのは自分とルイズの母親であるカリーヌ―――そして……
「ふむ。それは確かに気になるな。それには私も興
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