第十一章 追憶の二重奏
第二話 家族
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親の言葉に頷き駆け足で部屋を出ていき、その後をアンリエッタをエスコートしながらエレオノールとカトレアがついていく。
しかし、退出したアンリエッタとエレオノールの後を追ってドアをくぐり抜けようとしたカトレアが、
「お母さま?」
部屋から出ようとしない母親に向かって振り返る。カトレアの呼びかけに、しかしカリーヌは応じず顔を横に向けたまま口を開いた。
「わたくしは少しやることがあります。失礼がないようしっかりとホストを努めなさい」
「え、えっと。やること……とは?」
母の視線に辿り、カトレアの視線が部屋の隅へと向けられる。そこにはソファーが一つ置かれており、その上に一人の男が座っていた。
「………………………………………………」
「……いえ、シロウさん。後ろには壁しかありませんから」
カリーヌとカトレアから向けられる視線から逃げるように、ゆっくりと背後を振り向く士郎。後ろに誰かが立っていてくれと願うようにゆっくりと振り返る士郎の姿に、見ていられないとばかりにカトレアは目を伏せ悲しげなツッコミを入れた。
若干肩を落としながら顔を前に戻した士郎に向かってカリーヌがゆっくりと近づいていく。歩幅は狭く、ゆっくりと。それはまるで大型の肉食獣が獲物に近づくかのようで。
「あの、何か?」
引きつっていることを自覚しながらも、士郎は近付いてくるカリーヌに笑みを向ける。向けられる笑みに、カリーヌも笑みで返す。それは確かに笑みではあったが、向けられる当の本人たる士郎にとっては、危険な肉食獣に威嚇されているような気がして内心この場から逃げ出したい思い出いっぱいであった。
「ええ、色々と調べたいことがありまして、少しあなたの時間をいただきます」
―――断定ッ?!
拒否権はないのかッ?! と内心の驚愕を一切顔に出すことなく、士郎は努めて冷静な顔でソファーから立ち上がった。
「調べたいこととは?」
「そうですわね。まずは、あなたとルイズとの関係を……」
バタンとドアが閉まる音が聞こえ、士郎は顔をドアの方向に向ける。そこには何故か杖を片手にドアの前に立つ公爵の姿が。
「……私はルイズの使い魔ですが」
何も問題はないですよとばかりに口元に笑みを浮かべたまま顔をカリーヌの方に戻す士郎だが、背中にはねっとりとした感触の汗が吹き出ているのを感じていた。
「ほう……使い魔ですか」
「はい」
スッと目を細め細い指を当てた顎を引き、何やら考え込む仕草をカリーヌはとる。士郎は口元に笑みを浮かべたままカリーヌを見下ろしていたが、
「てっきりわたくしはルイズの愛人かと思っていました」
「――――――――ッ!!?」
ミジリッ! と何かが軋む音が部屋に響いたのを士郎は
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