第十一章 追憶の二重奏
第二話 家族
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てください。もしわたくしが何か道を踏み外してしまった時、それを声を上げて指摘できると、杖を向け間違いを正そうとする事が出来ると」
公爵は先程ルイズを見つめていたアンリエッタの目を思い出していた。疑いも何もなく、ただ純粋に信頼だけがある目を……。
顔に手の平を当てた公爵は、指の隙間から深々と溜め息を漏らすと、指と顔の間からルイズを盗み見た。
「娘を信じろと……」
手から顔を離した公爵は、強く目を瞑った後、開くと同時に「ルイズ」と娘に呼びかける。父から呼ばれたルイズは、一つ頷くと公爵に向かって歩き出し父の前に立つ。目の前に立ち止まったルイズを、公爵は床に膝を着くと優しく抱き寄せた。
「何時の間にか大きくなっていたのだね。知らない間に陛下からそれほどまでの信頼を受けるようになっていたとは……とっくの昔に巣立っていたのだねお前は……」
娘の頭を撫でながら、公爵はその耳元に囁くように話しかける。
「陛下のご期待に応えられるように頑張りなさい。ルイズなら出来ると信じているよ。周りに流されることなく、真実を見抜けるようになりなさい。間違ったことを間違いと言えるように……」
最後に髪を上げ広がる額にキスをした公爵は、少し乱れたルイズ髪を整えた。
「辛くなれば何時でもここに戻ってきていいんだよ。遠慮することはない。ここはお前の家であり、お前は私の娘なのだから」
立ち上がった公爵は、アンリエッタに身体を向けると深く頭を下げた。
「陛下のおっしゃった通り。私はただ名誉と誇り、そして忠誠さえ守ればそれで良かった時代の旧い貴族です。ですから、『虚無』という伝説の力が蘇り、新しい時代が始まるだろう今の時代に、私のような旧い貴族では力になれない事が多くあるでしょう。まだまだ未熟な娘ですが、陛下が今から歩まれる道の力になれる筈です。これからあなたが歩まれる王の道に、始祖のご加護があるよう祈っております」
下げていた頭を公爵が上げると、今まで黙って見ていたカリーヌが手を叩きながら声を上げた。
「さあ、話が纏まったのならば、遅くなりましたが夕餉にいたしましょう。陛下には物足りなく感じられるかもしれない質素なものですが、よろしければご列席をお願いしてもよろしいでしょうか?」
カリーヌが頭を下げて尋ねると、アンリエッタは笑みを浮かべ小さく頷く。それを確認したカリーヌは顔を上げると後ろにいるカトレアたちに振り返る。
「カトレアとエレオノールはホストをしなさい。ルイズはお友達を呼んでいらっしゃい。お友達にはまだ簡単な軽食しか出していませんからお腹を空かせているでしょう」
家長たる公爵を背中に、かつての姿を思わせるような騎士団長が団員に指示するようにカリーヌは各自に指差し命じ始めた。ルイズが母
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