第十一章 追憶の二重奏
第二話 家族
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はそれぞれに役割というものがあります。平民は食べ物を作り、商人は様々な物を流通させ、兵士は外敵から国を守り、貴族はそれらを管理する……では、王は何を?」
手を前に、視線を自身の掌に落とし、アンリエッタはポツリと呟く。
「貴族をまとめる? ですが、それは王でなければ絶対に無理というものではありません。大臣たちの提案の決済をする? それもまた、王でなければならない理由はありません……」
「……確かに王である必要はないのかもしれませんが、王がいなければ遅々と進まない案件もあります。必要はなくとも、理由はあるのです」
苦く、硬い公爵の言葉に、アンリエッタは顔を上げると、口元に小さな笑を浮かべた。
「ええ。その通りですわ。だから、わたくしは王になったのですから……」
アンリエッタが浮かべた儚げな笑みに、公爵を歯を食い締める。この目の前いる娘と変わらぬ少女が王となったのは、アルビオンが攻めてきた際、遅々と進まぬ対策に対し業を煮やすたことから玉座に着いたと聞く。ならば、そんなことはとうの昔に気付いていることである。
「王になれば何かができる……そう思っていました……ですが、その結果はご存知の通り……復讐に狂い、戦を起こし、ただいたずらに民を傷付けただけでした……何千という命を散らし、その何十倍もの家族に、恋人に、友人に悲しみと絶望を与えました……」
「何もそれは陛下だけのご責任では……」
「いいえ。いいえ違います。わたくしのこの名で、この口で命じて起きた戦です……わたくしが背負わなければならないものです」
静かに諭すように口にした言葉に、公爵はただ黙り込むしかなかった。
遠くを見るように、アンリエッタの視線が朧に揺れる。
「失ったものは取り返すことはできません。彼らが守る筈だった……守りたかったものを……わたくしは守らなければいけません。だからこそ……この国に災が降りかかるというのなら、わたくしはそれに対しあらゆる手を使ってでも守り抜きます」
もう、決めてしまったと、そう覚悟を宿した目で公爵を見るアンリエッタ。
「なので、わたくしは先程の公爵の問いに否とは言えなかったのです。ルイズの力で国を守れるというのならば、わたくしは躊躇うことなくその力を振るうつもりでいます」
「…………それ以外に力を使うつもりはないと保証は出来るのですか」
公爵は小さく開いた口からざらついた声を絞り出した。
「保証することも、公爵にそれを証明することもできません。戦争を一度でも起こしたわたくしの言うことを信じられないこともわかっております」
小さく頷いたアンリエッタは、先ほどとは別人のようなふわりとした笑顔を浮かべると、公爵とルイズを見返す。
「ですから、公爵はわたくしではなくルイズを信じ
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