第十一章 追憶の二重奏
第二話 家族
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陛下にお尋ねしなければならないことがあります」
「なんなりと」
振り返り、公爵を見つめるアンリエッタ。
「娘が持つ力を使い、陛下は一体何をなされるおつもりでしょうか? 陛下の言われる通り、『虚無』の力は絶大でしょう。カリーヌの魔法を打ち消したと聞くだけでも、その強大さがわかります。ですが、力には使い方がございます」
アンリエッタを見る公爵の目の輝きが強まる。
「……陛下は『虚無』の力を持って何をするおつもりでしょう? ……戦争の兵器とするおつもりでしょうか」
「父さまっ!」
ルイズの悲鳴のような怒りの声が響く。
だが、それをアンリエッタは手を上げることで抑えた。
「公爵のご心配も最もです。残念ですが、わたくしはその問いに否と答えることはできません」
「それは、どういうことでしょうか……もし、陛下が娘に対し何らかの勘違いをお持ちになっているというのならば、我らは悲しい決断をしなくてはなりませんが……」
公爵の顔に色がなくなっていく。それは顔色というわけではなく、そこから見える感情の色が見えないのだ。どんな感情を抱いているか分からない無表情の中、唯一目だけが強い意志に応えるように輝いていた。
意思の弱いものであれば、膝をついてしまいそうなほどの眼光を前に、しかしアンリエッタは微かに悲しげな色を浮かべた顔を小さく伏せるだけであった。
「それについて答える前に一つだけ、公爵にお聞きしたいことがあります。この国の品位、礼節、知性の守護者である旧い貴族であるあなたにであり、そしてまた、国民の一人として……」
「なんでしょうか」
静かに息を吐いたアンリエッタは、一度目を閉じるとゆっくりと開いた。
「王とは一体―――何なのでしょうか?」
言葉に詰まるように息を飲んだ公爵を見つめ、アンリエッタは自身の胸をそっと触れた。
「わたくしは王となりました。望まれ、そして望んで王座に着きました。国には王がいなければと言われ、王になれば何かができるのではと……ですが、王となったわたくしが成したことで、王でなければ成せなかったもの等一つもありませんでした」
「そんなことは……」
公爵の開きかけた口は、アンリエッタの静かな瞳を受けて閉じることになった。
否定することができなかったからだ。事実、アンリエッタの父親である前王が崩御してからアンリエッタが王座に着くまでの間、枢機卿であるマザリーニが中心となって政務は行われ、結果として大きな問題は起きることなかった。
それはつまり……。
「それでは、王とは何なのでしょうか?」
「…………」
「平民、商人、兵士、貴族……様々な人や物が集まり国となり、その国を王が治めることで国は王国となります。国を形作るものたち
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