第十一章 追憶の二重奏
第二話 家族
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が追いつかないでいるエレオノールが頭を抱えて膝を曲げて座り込んでいた。
「いえ、ちょっと待って、『虚無』ですって? ありえないでしょ? あのおちびが『虚無』? 伝説の魔法を? はは、駄目ね、きっとこれは夢よ。そうに決まっているわ」
「あらお姉さま? 駄目ですわ。早く現実に戻って来てください。お得意の現実逃避にはまだ早いですよ」
「何がお得意の現実逃避よっ!? 私が何時現実逃避しているっていうのよっ!!」
「あら? この間もなさっていませんでしたか? 手紙を持ったままブツブツと何か言いながらふらふらと外へ向かって歩いていましたが……あの時も『これは夢、これは夢よ』などと口にしていたような……」
「か〜と〜れ〜あ〜ッ!!?」
婚約破棄と言う思い出したくもない記憶を思い出させた妹に対し、凄まじい殺意を覚え髪を逆立てにじり寄る姉の姿に、カトレアは変わらぬ柔らかな笑みを浮かべたまま頬に手を添える。
「駄目よお姉さま。陛下が見ていますわ」
「―――ッッ!!?」
ぼそりと耳元に告げられた言葉に、エレオノールは苦虫を飲み込んだような表情を浮かべる。
くすくすと笑う妹の姿に、重く苦い溜め息を吐いたエレオノールは苦々しい顔をカトレアに向けた。
「あなた学院に行って性格悪くなってない?」
「あら? そうですか?」
「……絶対にね」
首を傾げる妹の姿に溜め息を吐きながら立ち上がったエレオノールは、先程まで感じていた目眩がすっかりなくなっていることに気付いた。カトレアとのやり取りが、ある意味気付薬になったのだろう。混乱していた思考が落ち着きを取り戻していることに気付いたエレオノールが、まさかと思い妹を見返すと、カトレアはただにこにこと何時もの笑みを浮かべているだけ。その姿に毒気を抜かれたように、同じように笑みを浮かべたエレオノールがルイズに向き直った。
それを待っていたかのように、アンリエッタの声が部屋に響く。
「驚くのも無理はありませんが、事実です。伝説に語られるだけの系統が蘇り、そして、その担い手はルイズだけではありません」
「……陛下がここへ来た理由をお聞きしてもよろしいか」
横目でルイズを一度見た後、アンリエッタを見返した公爵は低い声で問いかける、低く平坦なその声音は、公爵の娘たる姉妹たちさえ聞いたこともないようなものであった。それに不吉を感じたように、エレオノールは顔を若干青くし、ルイズは硬い唾を飲み、カトレアは小さく顔を伏せた。
公爵のことをあまり知らないアンリエッタもそれを感じ取ったのか、身から生まれた動揺を抑えるために気づかれぬようにゆっくりと、そして静かに大きく息を吸い込んだ。
「罰を、与えに来ました」
「……越境行為に対するものですな」
「はい」
アンリエッタ
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