第十一章 追憶の二重奏
第二話 家族
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「……は? あ、す、すみませんが、もう一度お聞きしてもよろしいですか?」
暖炉の火が映る窓の向こうに、日が落ち星に満ちた空が広がる頃、アンリエッタを前にラ・ヴァリエール公爵が目の前に座るアンリエッタに問い返す。椅子に座る公爵の後ろには、マンティコア隊隊長の装いを改め、公爵夫人の姿に変わったカリーヌが立っている。その母の後ろに控えるように立っているのは、ルイズの姉であるカトレアとエレオノールの二人。三人は父である公爵の言葉に同意を示すように見開いた目をアンリエッタに向けていた。
その視線は時折アンリエッタから外れ、チラチラと部屋の隅に設置されたソファーに向けられる。そこには士郎とルイズが並んで腰掛けていた。姉や母からの視線に晒されたルイズは、乾いた笑みを返しながら、隣に座る士郎の腕を握った。
カリーヌの目が微かに釣り上がり、エレオノールの目が大きく釣り上がり、その横ではカトレアは頬に手を当て微笑ましそうに口元を綻ばせ、士郎は背筋に走る寒気にブルリと身体を震わせていた。
そんな静かな攻防? を尻目に、アンリエッタは公爵の願いに小さく頷くと口を開く。
「ええ、構いませんが、何度でもいいましょう。ルイズが目覚めた系統は『火』の系統ではなく、伝説の系統である『虚無』です」
アンリエッタの言葉に公爵は目を閉じると背もたれに深く寄りかかった。天井を向く顔を手で覆い、小さく唸り声を上げると、突如椅子から立ち上がり、ルイズに向かって歩き出した。近づいてくる父親の姿に、ルイズは慌てて士郎の腕から手を離すと、勢いよく立ち上がった。
足を止めた公爵は、目の前のルイズの頭に手を置くと、その手をゆっくりと動かし始める。
「『虚無』とは……陛下のお話しを信じないではないが……それでもやはり……このルイズが……伝説に詠われるだけの『虚無』。それがどうのような魔法だったのかもその詳細は全くの不明。表立ってではないが、そんなものは存在しなかったと言う者までいる魔法を……神学者の中には強固に存在すると言う者はいるのはいるが……」
ぶつぶつと呟きながらルイズを見下ろす公爵の背中に、カリーヌの短い言葉が投げかけられる。
「わたくしは信じますわ」
「……何故だ?」
首だけで後ろに振り返り、公爵は自分の妻を見る。
「ルイズを迎えに行った際にですが、この子はわたくしの魔法を打ち消しました。あの魔法……少なくない数の魔法を知るわたくしにも知らない魔法でした。あれが『虚無』なのでしょう。そうよね、ルイズ?」
母から尋ねられたルイズは、小さく首を縦に振る。
「はい」
「……『虚無』、か」
公爵がルイズの頭に乗せていた手を、自身の額に当てる。顔に浮かぶのは硬い表情であった。
その背後では、驚愕の真実に上手く理解
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