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SR004〜ジ・アドバンス〜
20years ago ”Beginning of the world”
#02
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は?何でって一緒にダイブしたんだから当然……」
「いや、そうじゃなくて……外見だよ外見」
「ああ……」

 幸春は優里の言わんとしていることが納得できた。なるほど。彼女のイメージでは、この世界にダイブした時に仮想の姿が作成されるものと思っていたらしい。プレイヤー自身がアバターの外見パラメータをゼロから作成することのほとんどなくなった現在、一般的なVRMMOではアバターはダイブ直後にゲームシステムがランダムで作成する。優里は割と事前情報を調べるタイプの人間なので、『SR004』でもその方式がとられると思っていたのだろう。そのため、現実世界とすっかり同じ外見は驚くモノだったようだ。よくよく考えてみると、下調べをきちんとする優里が『リンク・アドバンス』のコマンドを知らなかったとは考えづらい。知らないふりをしていたのだろうか?

 なぜだ……などと疑問に思いながら、幸春は彼女の疑問に答える。

「AVR作ってる会社と提携してるっていったろ。その技術を応用して、現実世界の俺達の姿をカメラでとらえて、それを基にしてアバターをつくってるらしい」
「へぇーえ。すごいのね……ますます世界にびっくりしちゃう」
「だよなぁ。正直はじめてこれを思いついた奴は天才だと思うよ……」

 事実、天才なのだ。AVRを世に送り出したのは、《Virgin&May》と言う名の、謎の技術者チーム。正式名称が長いため、普段は《VaM》と呼ばれることが多いそのチームは、AVRの進化が加速するときに、必ずと言っていいほど技術協力を申し出た。彼らの技術と頭脳がなければ、いくら科学が進んでいるからと言って、現在のAVR世界には到達しえなかっただろう、と言われている。

 そうか、と幸春は思う。この世界がβテスト時代よりもリアルに見えるのは、アバターの精度が上がっているせいかもしれない、と。β時代(かつて)もリアルから直接送り込まれてきたのではないか、と疑問に思ってしまうほどのアバター完成度だったが、現在はさらにそれに輪をかけて完成度が高い。心臓の鼓動、体温、空気がふれる肌の感触から、さらには青筋一本に至るまでが忠実に再現されている。一体どういう機構を使えば、これほどまでに完成度の高い世界が作れるのか。

「もうここは、ある意味本物の《異世界》なのかもしれないな……」

 我知らず、そんな言葉が零れ落ちた。『SR004』の世界は、もはや自分のもう一つの現実と言っても過言ではないのかもしれない。そう思っても仕方がないほどの、世界の完成度であった。


 そしてその『カン』は、あながち間違いではなかった。


 ***


 メニューウィンドウを開く。プレイヤーネーム《ユキハル》、Lv1、所持金額金貨10枚(1000円相当)、基本装備……それらの情報が表示
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