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SR004〜ジ・アドバンス〜
20years ago ”Beginning of the world”
#02
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までの準備が完了する。

「それじゃぁ、始めるとするか……コマンドは分かるか?」
「ううん。なんていうの?」
「ほんとにVRゲーム初心者だな……それじゃ行くぞ。《リンク・アドバンス》」

 かつて、VR技術が完成したばかりの頃は、《リンク・スタート》だったというダイブコマンド。二十年ほど前、AVRの黎明期に使われていたコマンドは《ダイレクト・リンク》。そして今使われているワードの名は、《リンク・アドバンス》。異世界との接続は、加速的に進化(アドバンス)していく。今までも、そしてこれからも。そんな思いの込められた言葉だという。

 優里が同じ言葉をつぶやいたのが分かるのと同時に、幸春の意識は仮想世界へと引き込まれていく。虹色のリングを潜ると、もうそこは仮想世界だ。視界に表示されたゲームリストから『SR004』を選択し、ダイブする。視界脇のゲーム内情報によれば、現在ダイブしているプレイヤーはすでに一万人を超えている。このままなら、そう遅くないうちにβ時代(かつて)の最高記録である五万人余りをすぐに突破するだろう。

 視界がフラッシュ。体の全ての感覚がもう一度遠ざかる。再び肢体に感覚が、世界に色が戻ってきたとき――――

 
 そこにあったのは、リアルすぎる異世界だった。

 空が、空の色をしている。現実世界では決して見れないその光景が、どの仮想世界とも違う、圧倒的高性能な描画エンジンで描かれている。その空を、銀色の飛行船が陽光を反射しながら飛行していく。そびえたつビル群。運河を巨大な船が通行している。それらを動かしているのは、科学技術と魔法技術の結晶。SFメトロポリスを彷彿とさせる、『SR004』ゲーム世界最大の都市のひとつ、《玉座(スローン)》。それがこの場所の名前。太陽の光が、ビルのガラス窓を透過し、クリアな光を放つ。幸春は戻ってきたこの世界に、再びの感嘆の念を抱いた。

「すごい……」

 隣で呟く声がする。そちらを見ると、優里が本気で驚いたような表情を浮かべていた。

「ああ……βテストのときは、ここまでリアルじゃなかった……すげぇ。まるで本物の異世界みたいじゃないか」

 幸春の言葉は真実だ。β時代も『SR004』は歴代最高峰の描画でプレイヤー達の評価を集めた作品だったが、それでも何とか『仮想世界らしさ』を保っていた。だが、正式稼働した『SR004』描画エンジンは、もはや別次元の域だ。この世界は、もはや完全なる異世界とでも言えるモノではないだろうか。

 『拡張仮想現実』としての《アドバンスド(A)ヴァーチャル(V)リアル(R)》ではなく、『進化した仮想世界』としての《アドバンスド(A)ヴァーチャル(V)リアル(R)》。そんな言葉が浮かぶ。

「あれっ?何で幸春がいるの?」

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