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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四話 最高のカード
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が問い掛けるとヴァレンシュタイン提督は微かに笑みを浮かべました、怖いです。
「ええ、楽しくなりますよ、間違いなくね」
気が付けば全員が提督に対し敬礼をしていました、私もです。ヴァレンシュタイン提督は答礼すると無言で艦橋を出て行きました。
宇宙歴 795年 11月 12日 ハイネセン 統合作戦本部 マルコム・ワイドボーン
統合作戦本部のラウンジに有る喫茶店では皆がスクリーンを見ながらひそひそと話し合っていた。何人かは信じられないという様に首を振っている。
「驚いたな、あいつが総司令官代理とは」
「ああ、私も驚いたよ」
驚いたと言っているが隣に座っているヤンの表情に驚愕は無い、有るのは厳しさだけだ。
「どう思う? ヤン」
顔を寄せ小声で話しかけた。本音が聞きたい、ヤンも俺の気持ちが分かったのだろう、同じように小声で答えてきた。
「動き出したね」
「動き出したか……、俺もそう思う」
ヤンが俺を見た。そして髪の毛を掻き回した。
「四人で話し合ったと言っているが本当の所はトリューニヒト国防委員長とシトレ元帥が残りの二人を説得したのだと思う」
「同感だ、しかしここでヴァレンシュタインに指揮権を預ける理由は? ビュコック元帥、ボロディン元帥でも十分勝てると思うんだが」
宇宙艦隊は変わった。今なら各艦隊司令官はビュコック元帥が総司令官になっても従うはずだ。ウランフ、ボロディン、クブルスリー、モートン、カールセン、ヤン、ヴァレンシュタイン、そして俺。戦場では実力が全てだと理解している人間達だ。
「私もそう思う。しかしトリューニヒト国防委員長はヴァレンシュタイン中将を総司令官代理に選んだ。或いはヴァレンシュタイン中将自身がそれを望んだのだろう。だとすると……」
「だとすると……、次の戦いは単純な迎撃戦では無い、そういう事か」
「そういう事になるね」
“うーん”と思わず唸り声が出た。
「何を考えているのかな?」
ヤンが首を横に振った。
「分からない。しかし何か狙いが有るのは間違いない。そしてそれは和平に繋がっているはずだ……」
ヤンが俺を見た、俺もヤンを見る。
「分かっている事も有るさ」
「何かな?」
「奴が指揮を執る以上、今回の戦いは凄絶な物になるだろう。貴族連合軍は地獄に叩き落されるだろうな」
俺の言葉にヤンが無言で頷いた。
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