第四章
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応えた。だがその微笑みは僅かだが何処か硬かった。
「?」
鶴岡がそれに気付かない筈がなかった。だが彼はそれは杉浦の節度だと思っていた。
「やっぱりよおできた奴や。勝ちに奢らず、か。あいつらしいな」
鶴岡はそう思った。確かに杉浦は勝利に奢るような男ではなかった。
だがそれはいつものことである。彼の微笑みが微かに硬かったのは別の理由からだった。
(まずいな)
やはり血マメの状況が芳しくない。それどころか昨日よりも悪化していた。
しかし、それは決して表に出してはいけない。もし知られたら、それだけはならなかった。
(皆にいらぬ心配をかけたくない)
それだけではなかった。敵に知られでもしたら。
そこに付け込んでくるだろう。相手も必死だ。なりふり構ってはいられない。これも勝負だ。
(まだ誰も知らないな)
それだけが安心できることだった。とにかく今は誰にも知られてはならなかった。
杉浦はそっと球場を去った。そして一人自宅でその血を抜き取り手当てをするのであった。
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