番外4話『ウイスキーピークの夜』
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しかしたら酒が入っているせいかもしれない。両手の人差し指の指先をつんつんと重ね合わせながら何かをこらえるように、いじらしく言うナミが――
――好きだ。
「きゃ!?」
気付けばナミを抱きしめていた。
「っ」
離れないといけない。
反射的にそう思って、なのに、体は動かない。
動きたくなくて、動けない。
いっそのことナミに突き飛ばされでもしたら俺はナミのことを諦められる。そんなことをぼんやりと思った。
けど、ナミは俺のことを突き飛ばさずに、それどころか――
「な、ナミ?」
――背中に腕を回してきたわけで。
「あたたかーい」
ナミが俺の肩に頭をのせて、言葉を落とす。
「……っ」
ナミの甘い香りが鼻を突き抜け、理性に直撃する。
ナミの柔らかい感触が肌を突き抜け、本能に訴えかける。
もっと強く抱きしめていいんだろうか、とか。このままもう押し倒してもいいんだろうか、とか。体に力を込めようとして、ナミの先約の人はいいんだろうか、とか。そういえば歓迎会が開かれてにぎわっていたはずの酒場からの騒音が消えてるな、とか。理性が働いて、止まる。
もう何が何やらわからない。いろんな思考が脳内を巡り巡ってほとんど思考停止状態に陥ってしまっていた。
そんな状態で数分か……いや下手をすれば数時間か。多分それぐらいの時間が過ぎて、どうすればいいかわからなくなって「な、ナミ」と声をかけてみる。
そっと、俺の肩に乗っていたはずのナミの頭が動き、俺の眼前にまで迫っていた。俺の視界を埋め尽くすほどのナミの顔に目を外せなくなる。
こんなに近くでナミの顔を見て、ただ思う。
きれいだなぁと。
いや、まぁ正確にはあれだ。
びじかわいいだけど。
……久しぶりにこれを使った気がする。
「ハント」
「……」
あまりにも近いナミの言葉に、俺はとっさに返事をできなかった。
金縛りにあっているかのように体が動かず、脳が何かに浸食されているかのように思考が働かない。
ナミの吐息が酒臭い……はずなのに、どうしてか甘い。
「ねぇ、ハント?」
確認するかのように俺を呼ぶナミが、今度は俺の言葉を待たずにまた口を開こうとして――
――ドン、と。
穏やかとはいえない音が響いた。
「……銃声?」
やっぱり罠かなんかだったわけか。
多分、唯一まともだったゾロが戦闘を開始したということだろう。この町には大したことのある人間はいない。それはもうわかっていたけども、もしも町ぐるみの罠ならば多勢に無勢もありうる。
ゾロがやられるとも思えないけどさすがに放置しているわけにもいかない。
「……ふぅ」
そっと、ナミを
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