暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外3話『クジラのいる双子岬』
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0年もこの岬でね、まだその仲間の帰りを信じて待ってんのか」
「随分と待たせるんだなー、その海賊も」
「ばーか、ここはグランドラインだぞ――」
「てめぇはなんでそう――」
「――だが事実は想像よりも残酷なものだ」

 まだまだクロッカスの話は終わっておらず、ナミもそれに耳を傾けていたのだが、ハントが先ほど壁に叩き付けられてからそのまま横になって動いていないことに気づいた。

「だ、大丈夫? ……ハン……ト?」

 少々強く殴りすぎただろうかと不安げに近づいたナミだったが、ハントの表情が珍しく真剣なそれになっていることに気づいた。

「ん……ちょっと考えてただけ」

 ナミの戸惑いが含まれた声に、ハントはすぐさま立ち上がって顔をラブーンへと向ける。

「……?」

 つい一瞬前まであった陽気な姿ではなく、声をかけるのも憚れるほどに真剣な表情でラブーンへと視線を送るハントの姿を不思議には思うのだが、今はまだクロッカスの話の最中。どうしたのか、というハントへの問いを呑み込み、またクロッカスと仲間たちの会話に耳を傾けて――

「見捨てやがったのか、このクジラを! そいつらを信じてこいつはここで50年もずっと待ち続けてんのに……ひどいぞ、そ――」
「――違う!」

 ラブーンを見捨てた海賊たちをなじるウソップの声を、ハントが遮った。

「事情があってグランドラインから逃げ出したのかもしれないけど、帰ってくる。約束の期限を守れなくても、何年かかっても、絶対に帰ってくる! 男の約束は恐怖心なんかに負けるもんじゃない! 絶対に!」 

 誰を見つめるでもなく、ただ切実な声で。自分に言い聞かせるかのようにハントが叫ぶ。
 ハント自身本心からそれを信じて言っているわけでもないことはその悲痛な表情を見ればわかる。
 もしかしたら自分のことを重ねているのかもしれない。
 大切な仲間のもとに帰ってくる。
 大切な人を助ける。
 内容に差異はあれど、大切な何かのためにそれを果たすという中身に変わりはなく、ハントがそれを叶えるのに大変に長い歳月がかかった。島のみんなに随分と苦労をかけ、ナミにはいらぬ悲しみを味あわせてしまった。

 だから、ラブーンを見捨ててしまった海賊たちに自分を重ねているのかもしれない。
 不意にヒートアップしたハントの様子に目を白黒させる一同をおいて、ナミだけはハントのその想いに気づいたのか「ハント」と小さく心配そうな声を漏らす。
 誰もが声を失い、発するべき言葉を失ってしまった。

 ――と。

「うおおおおおお!」

 不意にルフィの叫び声が響いた。
 もちろん、一同の視線はルフィへと向けられる。
 そこには折れてしまったメリー号のマストを抱えてラブーンの頭をかけあがるルフィの
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