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偽典 ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
第8章 そして、伝説へ・・・
第肆話 離別
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がいたけれども、セレンの場合いるのかな?」
俺は、意識を精霊ルビスに向ける。
「セレンがあの世界で確保できる身体がありますか?」
(わかりません)
ルビスは、静かに答える。
「そんな!」
セレンは、口を手にあてる。

「身体がない場合、セレンはどうなりますか?」
(あちらの世界とこちらの世界と違うかもしれませんが、魂だけの存在となるでしょう)
精霊ルビスは、事務的に答える。


「その場合、俺はセレンを認識できますか?」
(無理だと思いますよ)

「それに、仮に身体があったとしても」
俺は、セレンに
「それは、セレンではなく、別の人になる」
「!」

「その姿が、おじいさんになるのか赤ちゃんになるのかわからない」
「そ、そんな」
セレンは動揺をかくせないでいた。
「あちらの世界は広い。
人口も、この世界とは比べものにならないくらいに多い。
魔法もあちらでは使えない。
だから、一生で逢えない可能性が非常に高い」

「そして、俺はセレンを探さない」
俺は、断言する。
冷酷な話かもしれない。
だが、偶然再会する奇跡など信じていない。
世界中で、たった一人を捜すなんて、人生の総てを賭けなければ、挑めるようなことではない。
そして、それを挑んだら、戻ってきた意味がない。
「・・・・・・」



もはや、誰も何も言わなかった。



「精霊ルビスよ」
俺は、声に出して呼びかける。
(よろしいですか?)
ルビスの口調に変化は見えない。
「ああ、頼む」
「・・・・・・」
「アーベル」
セレンはうつむいたまま黙っていて、テルルは両手を強く握りしめて覚悟を決めたように俺に声をかけた。


「新しい、旅にでも出たと思ってくれ」
俺は、二人に最後の言葉を残す。
「二人のことは、忘れない。
ありがとう」

俺は、浮遊感を覚えた。
身体と意識がずれて、意識だけがゆっくりと上昇している。

地面には、ぐったりと倒れた俺の姿と、俺を抱き抱えようとするテルル、俺の手を強く握りしめるセレンがいた。






「ここは・・・・・・」
気がついた俺が、周囲を見回すと、前の世界に存在する、病室のベッドで寝ていたことを理解した。

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