W バースデイ・アゲイン (4)
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くんだ。俺が普段使ってるのは大呪。多く唱えりゃ効くってもんでもないが、一応憶えてみるか?」――)
「ナウマク サマンダバザラダン」
絶対抜け出してみせる。あたしは好きな男に救われるヒロインじゃない、渋谷サイキック・リサーチのれっきとしたプロの調査員だっ。
「センダマカロシャダ ソワタヤ ウン タラタ カン マン」
少しは効いてるのか、静かだった以津真天が唸りだした。
二回。三回。まだ充分じゃない。
四回、五回、六回でやっと重みが少しだけ減ってきた。
懐剣まで腕よ届け、届け――!
届いた!
「ナウマクサマンダバザラダン、センダマカロシャダソワタヤウンタラタ、カン、マン!!」
腕を折る覚悟で懐剣を振った。
懐剣は以津魔天の左目にざっくり刺さった。以津真天が飛び退いて、あたしはやっと起き上がれた。
腕が痺れる。こんな腕であれほど素早く刀を振ったのは我ながら凄い。
日高は少し驚いていた。信じられないものを見るような目であたしを見た。
お生憎だったね。あたしはアンタみたいな外道女の思い通りにはならない。
やれる所までやろう。もちろん逃げることも選択肢に入れて。綾子が言ってた。がんばればなんとかなると思うのは素人の考えだって。あたしは度量を弁えない馬鹿じゃないつもり。危なければ逃げるし、立ち向かえるなら全力で挑む。
あたしは懐剣を構える。
「お下がり、式王子」
唸っていた以津真天が停止する。
日高が何かをフローリングから持ち上げて、あたしの前に進んでくる。薙刀だ。
「直接やり合おうっての?」
日高は艶やかに笑った。
「安心なさって、死にはしないから。ああ、でも、勢い余って殺してしまったら御免あそばせ」
…………こんなヤツに…
こんな人殺しを楽しげに語る女に、この亡骸の人は……!
「あんた、何でそんな理由で人を殺せるのよ!!」
「そんな理由?」
日高の顔から笑みが消えて、代わりに貰ったのは、薙刀の一閃。
「っうぁ!?」
我ながらよく避けた。でも、胸が少し切れた。
「葵さんを愛したのはわたくしが先よ。わたくしがずっと慈しんできた葵さんを奪ったグリフィス、あの男が存在した証など、この世に残してなるものか」
「そーゆーのを自分勝手って言うんだよ!! もう性別とか抜きにして、ナルのひーばーさんがあんたを好きにならなくて当然だよ!」
「お黙り!!」
二度目の薙刀に、懐剣が手から弾かれた。
「きゃあ!!」
「葵さんはわたくしの人よ! サムエル・グリフィスと愛し合ったことなど無かったことになればいい! だから消す、だから『在った』証拠の男児を消す!」
だめだ、何を言っても通
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