W バースデイ・アゲイン (3)
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座。薄暗くてすぐには気づかなかったけど、台座を中心に床に円陣が書いてある。――あやしい。
穴を横切らないと行けない。あたしは深呼吸して、台座に向かって歩き出した。
…カサ…
「うひゃあっ!!」
こ、こら、怖がってどうするっ。
懐剣をいつでも抜けるよう握り締めて、さあ、どっからでも来い!
穴を仇みたく睨みつけると、何か黒いモノが穴から出てくるのが見えた。
――土蜘蛛!
懐剣を鞘から抜く。薄暗い居間の中で、刀身が鈍く輝いて。
その向こうでは、初めて見た日の倍の土蜘蛛が、カサカサギチギチと蠢いていた。
「ひっ…」
ごめん、麻衣ちゃん、嘘をつきました。怖い、というか、気持ち悪いです!
確実に百匹単位でいる。この剣、土蜘蛛除けだってナルは言ったけど、持ってても土蜘蛛は確実にこっちに近づいてくる。
やっぱり、応戦用、なのよね? あたしが使ったことのある刃物なんて、包丁とカッターナイフくらいなのに。
悩む間にも迫る、土蜘蛛の群れ。噛まれたら麻痺、ってナルは言った。
ええい、ままよ! どの道、ここを突破できなきゃ、式符の奪還なんてできやしない。
「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前!!」
懐剣を握ったまま九字を切る。
「ぇ……ありゃ……」
何匹かどころじゃない。群れの一角がまるまる焼け焦げた。しゅうしゅうと煙が上がって、タンパク質の焼ける臭い。残ったのは焦げた紙だけ。
早九字だけで、この威力。一体どんなに強い霊具を取り寄せたのよ。ナルってばこれだけ入念に準備して。
10年間もずっと。
彼はずっと今日のために頑張ってきたんだ。
「じゃあ、あたしも負けてらんないね。――臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前!」
懐剣を刀印代わりにしてもう一度九字を切ると、また土蜘蛛が焼けて札に戻った。
一体どれだけ、そんなことをくり返しただろう。
フローリングが焦げるくらいに何度も、何度も懐剣で九字を切って、何とか全部の土蜘蛛を札に戻せた。
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