暁 〜小説投稿サイト〜
Meet again my…
W バースデイ・アゲイン (3)
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
座。薄暗くてすぐには気づかなかったけど、台座を中心に床に円陣が書いてある。――あやしい。

 穴を横切らないと行けない。あたしは深呼吸して、台座に向かって歩き出した。

 …カサ…

「うひゃあっ!!」

 こ、こら、怖がってどうするっ。
 懐剣をいつでも抜けるよう握り締めて、さあ、どっからでも来い!

 穴を仇みたく睨みつけると、何か黒いモノが穴から出てくるのが見えた。

 ――土蜘蛛!
 懐剣を鞘から抜く。薄暗い居間の中で、刀身が鈍く輝いて。
 その向こうでは、初めて見た日の倍の土蜘蛛が、カサカサギチギチと蠢いていた。

「ひっ…」

 ごめん、麻衣ちゃん、嘘をつきました。怖い、というか、気持ち悪いです!

 確実に百匹単位でいる。この剣、土蜘蛛除けだってナルは言ったけど、持ってても土蜘蛛は確実にこっちに近づいてくる。
 やっぱり、応戦用、なのよね? あたしが使ったことのある刃物なんて、包丁とカッターナイフくらいなのに。

 悩む間にも迫る、土蜘蛛の群れ。噛まれたら麻痺、ってナルは言った。

 ええい、ままよ! どの道、ここを突破できなきゃ、式符の奪還なんてできやしない。

「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前!!」

 懐剣を握ったまま九字を切る。

「ぇ……ありゃ……」

 何匹かどころじゃない。群れの一角がまるまる焼け焦げた。しゅうしゅうと煙が上がって、タンパク質の焼ける臭い。残ったのは焦げた紙だけ。

 早九字だけで、この威力。一体どんなに強い霊具を取り寄せたのよ。ナルってばこれだけ入念に準備して。

 10年間もずっと。
 彼はずっと今日のために頑張ってきたんだ。

「じゃあ、あたしも負けてらんないね。――臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前!」

 懐剣を刀印代わりにしてもう一度九字を切ると、また土蜘蛛が焼けて札に戻った。



 一体どれだけ、そんなことをくり返しただろう。
 フローリングが焦げるくらいに何度も、何度も懐剣で九字を切って、何とか全部の土蜘蛛を札に戻せた。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ