W バースデイ・アゲイン (2)
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傷のみに特化させてきた技。
敵は700年前から存在して実体化した生粋の妖怪だ。10年の成果が試される。力及ばなければ死あるのみ。
そのプレッシャーは逆に僕の精神を研ぎ澄ませた。
以津真天は微動だにしない。意図は知らない。動かないなら好都合だし、例え動かれても中る確信があった。
ギャアアアァァァァァー!!
咆哮。地を蹴った以津真天に、矢を放った。
矢は不可視の波力を伴って以津真天の左下顎に的中した。以津真天は不快そうに頭を振り、なおも突進してくる。
2本目の矢を、以津真天の目に狙い定める。
3メートルと空かず以津真天が肉迫した瞬間、矢羽から指を離す。吸い込まれるように目を射抜く矢。
以津真天を避け際、肩に熱が爆ぜた。肩口を押さえると、手が真っ赤に染まった。感触もおかしかったから、肉ごと抉れたんだろう。だが、臨戦の緊張のせいか、危惧するほど痛みはない。
痛みには慣れている。サイ能力の特性上、死に等しい体感をしたこともある。
矢筒から三本目の矢を出して、弓に番える。
目を射抜かれて、血を流しながら頭を振る以津真天。あれも術者に使役されるだけの憐れな者だが、それでも以津真天を赦すつもりはない。
イツマデ…イツマデ…イツマデェェェェェェェェ!!!!
骸を捨てるヒトの不信心を責める妖怪は、蛇の胴をくねらせながら僕を目指す。しなる尾を躱せず、盾にした腕ごと身体が横に吹き飛んだ。
地面に叩きつけられる前に手を突いて、全身を回転させることで姿勢を保つ。
空いた手で懐から三本の水晶独鈷剣を、指の間に挟んで出し、ナイフ投げのように以津真天に投擲する。
二本は外れたが、一本が以津真天の羽根の付け根に刺さった。
手負いの獣は強い、とはよく言うもので。
ついに以津真天から漫然とした感が消えた。
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