W バースデイ・アゲイン (1)
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。妖怪のたぐいは日没に向けて活性化する。叩くなら日の高まる午前帯」
「分かった。……ねえ」
思わず身構えた。が、言われたのは意外すぎる一言。
「一緒に帰ろう。約束だよ」
手を両手で包まれる。
両親を殺されてからの10年より、彼女と過ごした4日間のほうが、ずっと他者とスキンシップを図れている。どんな皮肉だろう。
僕があなたの切実な訴えにNOと言えるわけがないのに。
「ああ。約束だ」
タクシーで1時間ほどの郊外へ。着いたのは、あちこちに蔓の巻きついた、いかにもそれらしい寂れた屋敷。ここが安部日高の現在の拠点だ。
「ここ……」
「知ってるのか?」
「うん。――あ、そっか。ナルは知らないんだっけ。ここなの。あたしたちが初めて調査した家。森下さんってご一家が住んでてね。そっか……この世界じゃ、典子さんと礼美ちゃん、ここに住んでないんだ」
一度来たことがあるなら。僕は例の調査会社の社長がメールでよこした見取り図を麻衣に見せた。
「前に来た時と内装に違いはあるか?」
「ん〜……、……、ない、と思う」
「僕はここから回り込んで、中に入るつもりだった」
「うん――そうだね。ここ、確か縁側だった。覚えてる」
「僕は最初ここから中に侵入して、迎撃しつつ式符の祭壇を壊す予定だった」
だが今は麻衣が、つまり日高が知らない二人目の戦力がいる。
本来の麻衣はサポート寄りの能力者だとリンやまどかから聞いている。だから今も麻衣を矢面に立たせる気はない。
「僕が正面で日高や以津真天を引きつけている間に、麻衣は以津真天の式符を壊してくれ」
「どうやって?」
「祭壇になっている。それを適当に荒らしてくれれば」
「ちょっと勇気要るねそれ……分かった。やる」
「よし。――これを」
麻衣に一振りの懐剣を渡す。
「蜘蛛切という。土蜘蛛避けだ。持ってろ」
「ありがと。――行ってくる」
裏門に行く麻衣を送り出す。そして、一つ、深呼吸。
さあ。ここからは本来の「僕」のすべきことだ。
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