閑話ー聖槍と聖剣の英雄ー
68.紅い聖夜
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タクロースのようだったが、俺にはそんなことはどうでもよかった。
《背教者ニコラス》がクエストのセリフを口にするつもりか、ヒゲを動かす。
「うるせえよ」
「……殺す」
それぞれの思いを持った二つの漆黒が、同時に雪を蹴った。
死を覚悟したこの戦いで俺とキリトは生き残った。だが、達成感が何もしない。
槍を背中に納めると同時に、ボスが残していった頭陀袋が光に散った。
ボスのドロップアイテムを確認する。見慣れたアイテム名ばかりが並ぶ。慎重にスクロールしていく。
数秒後、俺はスクロールする手を止める。
そして背中の槍に手を掛ける。
「……よこせよ、キリト」
隣にいる黒の剣士の手には、卵ほどの大きな、七色に輝く宝石が握られている。
俺の言葉など聞こえてないようにキリトは、宝石をワンクリックする。
それと同時に背中の槍を抜き取り、構える。
「うああ……ああああ……」
予想外の叫びに俺は動揺する。
キリトはその宝石を掴み上げ、投げる。
「あああ……あああああ!!」
絶叫と雪を殴る音が響く。
「キリト……」
投げ捨てられた宝石を拾い上げ、ワンクリックする。すると見慣れた表示が出現。
【このアイテムのポップアップメニューから使用を選ぶか、あるいは手には保持して《蘇生:プレイヤー名》と発生することで、対象プレイヤーが死亡してからその効果光が完全に消滅するまでの間(およそ十秒間)ならば、対象プレイヤーを蘇生させることができます】
その言葉の意味が理解できなかった。
この文が何を言っているのかが。
およそ十秒間。
その一文が、これまでにない絶望を俺に与えた。
いつの間にか四十九層の迷宮区に俺はいた。
時刻はもう午前三時を回っている。
迷宮区を機械的にモンスターを倒しながらボス部屋を目指した。
俺はこのままボス戦へと向かう気なのだろう。それは、もはや俺の意思に関係なく体が勝手に動いているようだ。
これが彼女との約束を最短で達することができる俺の結論だった。
俺一人で迷宮区を攻略して、俺一人でボスを倒せばいいんだ。
あと、五十一階登ればクリアだ。一日一層クリアして行けば、最短で五十一日、約二ヶ月でクリアできる。
機械的に足を運んでいると後方からの声に足を止める。
「どこに行く気なの、シュウ?」
後方を振り返るとそこには、闇に同化するような全身を黒い服に包んだまるで忍のような服装。
働かない頭がその姿を記憶の断片から探る。
「……なんだ、お前か」
「なんだ、じゃないよ。どこ行く気なの?まさか一人でボス戦に挑む気じゃないよね?」
俺をしつこく《英雄達(アンノーン)》に誘ってくるメンバーの
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