閑話ー聖槍と聖剣の英雄ー
68.紅い聖夜
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キリト、シュウ!」
クラインが叫ぶがその声は、俺やキリトには届くことはない。
「ソロ攻略とか無謀なことは諦めろ!オレらと合同パーティーを組むんだ。蘇生アイテムは、ドロップさせた奴の物で恨みっこ無し、それで文句ねえだろう!」
「……それじゃあ……」
クラインの言葉を信じることができなかった。
「それじゃあ、意味がないんだよ……俺独りでやらなきゃ……」
槍を強く握りしめながら、周りを敵視するような眼で見る。
(ーー全員ここで斬る!!)
今の俺がおかしいことぐらいは、自分自身でもわかっている。
でも、俺にはここでレッドプレイヤーになってもやり遂げなきゃいけないことがある。それが何の意味もないということは自分自身がよくわかっているはずなのに。
誰か一歩でも動けば俺は槍を動かしかねない。
するとキリトでも風林火山のメンバーでもない第三の侵入者が姿を現す。
それは、ざっと見る限り三十人くらいはいるであろう。
「お前らも尾けられたな、クライン」
「……ああ、そうみてェだな……」
風林火山のメンバーが低く囁く。
「あいつら、《聖竜連合》っす。フラグボスのためなら一時的にオレンジ化も辞さない連中っすよ」
《聖竜連合》、《血盟騎士団》と並ぶほどの名を誇る、攻略組のギルドだ。
ここのプレイヤーのレベルは俺やキリトよりも低いだろうが、あの人数相手に戦って勝つ自信はない。
だが、キリトやクラインたちと戦うよりはずいぶんマシな方だ。
左手の槍を今度は、聖竜連合の連中に向けようとする。
そこに響くクラインの叫び。
「くそッ!くそったれがッ!!」
クラインは腰の刀を抜き取り、背中を向けたまま怒鳴った。
「行けッ、キリト、シュウ!ここはオレらが食い止める!お前らは行ってボスを倒せ!だがなぁ、死ぬなよ手前ェら!オレの前で死んだら許さねェぞ、ぜってぇ許さねェぞ!!」
「「……」」
俺とキリトは、クラインに背を向けると、礼もいわずに最後のワープポイントへと足を踏み入れた。
モミの巨木。他に樹のほとんどない四角いエリアは、積もった真っ白な雪は、その世界の時が止まったような気がするほどだった。
時計が零時になると同時に鈴の音が響いた。
漆黒の夜空に巨大なソリが出現する。
モミの木の真下に達すると同時に、ソリから黒い影が飛び降りてくる。二人の黒い影が少し後ずさる。
雪を蹴散らして出現したのは、背丈が俺とキリトの三倍ほどあるであろう怪物。一応人型だが、腕が異常に長く、前かがみの姿勢。小さな赤い眼が輝き、顔の半分からねじれた灰色の髭が長く下腹部まで届いている。
赤と白の上着に同色の三角帽子をかぶり、右手に斧、左手に大きな頭陀袋をぶら下げている。その姿は、サン
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