プロローグその1:デバイスは小包で届けられました
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受難の日々に関する話は置いといて、何故兄貴は啓太にもこれを渡せと書いたのかは不明であるが、そうなった以上渡さない訳にはいかない訳で、暇だった俺はそのままお土産を渡しに啓太の家まで向かう事にした。
でもって、だいたい5分後。
俺は啓太の住む家の前にチャリを停めると、鍵をかけてインターホンのスイッチを押した。
啓太の住む家は、瓦屋根のザ・和風な造りでもうすぐ築100年を迎えるそうだ。
前に地方の新聞で啓太の家の事が紹介された時は盛大に歯磨き粉を吹き出した記憶がある。
どうでも良い話だが。
「あーい」
スイッチを押した俺が暫く待っていると、インターホン越しに聞こえたのは啓太の声だった。
「啓太か?オレオレ、俺だ」
「……どちらさん?」
「槍一」
「合言葉を言え」
「マジで?」
「マジで、合言葉…………見る?」
「増すカラス」
「・・・よし、入れ」
ブツっとマイクの音が切れると門のロックが解除され、俺は屋敷の中へ入れるようになった。
ちなみに合言葉なんてものは最初から存在していない事に感づいている方も居るだろう。
基本的に全部ノリでやっただけの話である。
「ヘイ、らっしゃい」
寿司屋の板長のようにそう言って玄関に現れたのは俺の友人である啓太である。
ザ・日本人のコイツは、烏のように真っ黒な短髪にプラスチックフレームの黒縁眼鏡をかけた少々冷徹なインテリ系に見える反面、中身は俺以上のアホである。
まぁ、勉強の成績は学年トップで『聖祥大付属小学校』の連中とタメを張るどころか余裕でブッチ切る部分は確かにインテリなんだろうが、いかんせんコイツの思考回路もある意味いろんなものを余裕でブッチ切っており、勉強よりもしょうもない事に情熱を注ぐ変人なのだ。
具体的に例を上げるなら、コイツは教室で皆が飲まなかった牛乳パックをかき集め、後に『五十鈴君大リバース事件』と語られるようになった牛乳早飲み対決を実施した張本人であったり、鼻の孔二つにピアニカのホースを差し込んで其々二つのパートを演奏しようとし、酸欠で倒れたり、国語の授業で詩を書けと言われ、アン○ニオ猪木が朗読した「道」を丸パクリし、それに気づかなかった担任をベタ褒めさせたりと碌な事をしない。
なのに勉強だけは学年どころか海鳴市、下手をすれば県のトップなんだから、世界はこうじゃなかった事ばっかりだ。
「今日は何にするんだい?」
「適当に握ってくれ」
板長モードの啓太に俺がそう答えると、ヤツはいきなり俺の顔面に手を伸ばしてきた。
開いた五指がミシミシと音を立て俺の顔に食い込んでいる。
所謂アイアンクローというヤツだ。
「誰が俺の顔を握れっつった?」
「適当にっつたじゃん」
嗚呼今
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