第50話 決め台詞は【アポ!】
[3/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
脳内には映し出されていたのだろう。が、実際には硬く握り締めたグーパンチが長谷川の右頬目掛けて飛んできたのだが。
「あぶねぇ!」
咄嗟にしゃがんで回避した長谷川の頭上数ミリ上を神楽の拳が通過していく。常人では絶対出しえない風圧と轟音が長谷川の身と耳を霞めて行き、彼の肝を握り潰した。その直後として、激しい轟音が響いた。
見れば神楽が長谷川を殴る為に放った拳はコンクリートの壁を突き破り大きな穴を開けてしまっていたのだ。
「ちょっ、神楽ちゃん! 何やってんのさぁ!」
「やべっ、手が滑ったアル」
「いや、滑ったってレベルじゃないよねぇこれ。確実に長谷川さんの事殺す気で放ったよねぇその右拳」
長谷川と同様に新八も真っ青な顔になって穴の開いた壁と神楽の未だに硬く握り締められた右拳を交互に見ていた。
「どうすんのさぁ神楽ちゃん。あんだけデカイ音立てたら流石に怪しまれるんじゃないのぉ?」
「大丈夫アルよ。古今東西こう言ったシチュエーションだと主人公キャラがくしゃみでもしない限りばれないって言う暗黙の掟が出来てるアルよ」
「どんな掟だよそれ!」
毎度の如くツッコミを入れつつも新八は扉に目をやった。中では浪人達数人と老人が先ほどの轟音に驚き辺りを見回っている。
完全に警戒し始めてしまったようだ。
「何だ、今の轟音は?」
「結構近場だったぞ?」
数人の浪人の声が響く。確実に怪しんでいるのが見受けられる。
不味い、このまま此処に居ると確実に怪しまれる。
「神楽ちゃん、此処に居たらちょっと不味い、一旦身を隠した方が良さそうだよ」
「何言ってるアルか! 此処で引いたらあの女の人を誰が助けるアルね!」
「だからって僕達まで捕まったら本末転倒だよ! とにかく、此処は一旦隠れよう」
「分かったアル。何所かその辺にあるダンボールにでも隠れるアルよ」
そう言って神楽は壁の隅で何故か置かれていたダンボールの中に身を隠してしまった。
因みにダンボールには【大江戸みかん】と言う銘柄が彫られていた。
「いやいやいや、何でそう言う発想になるのさ! どう考えてもダンボールじゃ怪しまれるって!」
「長谷川さんも早く隠れた方が良いですよ!」
「って言うけどさぁ、新八君! 俺等どうやって隠れれば……」
言い終わる前に長谷川は言葉を区切ってしまった。目の前に見える光景に唖然としてしまったからだ。
長谷川の目の前には、これまた一体何処にあったのか疑いたくなる程にその場に似つかわしくない代物に扮して隠れている新八の姿があった。
「な、なぁ新八君……それは一体何のつもりだい?」
「何って、決まってるじゃないですか。考える人の銅像ですよ」
「結局お前もボケに回ったのかよ! 何所をどう考えたら考える人の銅像が通路の端っこに置かれているんだよ! ア
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ