第四十七話 思春期@
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上空に。
突如飛び上がり、俺の一撃を難なく避けてみせたのだ。このジャンプ力、きさまニュータイプか!? と言いたくなった俺は悪くない。攻撃後の硬直から抜け出せない俺の状態を見抜いていたやつは、今度こそケリをつける為に向かってきた。
俺には避けることも、右手に持つ武器で反撃することもできない。俺の持つ武器が壊されれば、俺は負けだ。だけど右手は動けない……ならば!
そして、やつの一撃は吸い込まれるように―――虚空をかけた。突如攻撃対象が消え、驚きに固まる相手。なんてことはない先ほどの焼き回し。俺は動かない右手の指先に力を入れ、武器を上空へと弾き飛ばしただけだ。もふもふするために鍛えあげた指先の力が、ここで役に立つとは。
攻撃の瞬間という最も無防備であり、且つ突然のありえない事象。硬直した相手に、俺は上空で回転していた武器を左手で掴み取り、最後の一撃を振るった。
「……とったぞォォーーー!!」
「にぃにすごーい!」
『なかなかの名勝負でした』
長い闘いの末、俺はついにやつとの戦いに白星を飾った。ウィンとコーラルからの声援に、瞼に熱いものが込み上げてくる。今でも信じられない気持ちがあった。それでも、間違いなく俺は勝利したんだ。俺の周りにいた男性のお客さんたちが、頑張ったなと拍手をしてくれる。中には俺と一緒に、涙ぐんでくれた人もいた。
やつのライバルとしてずっと挑戦し続け、目指し続けた場所。夏祭りの金魚すくい屋の屋台の前。たくさんの人々に支えられてきたことを俺は改めて実感する。心に事実がじんわりとしみ込んでいった。
夢なんかじゃない。俺は今日、……金魚を掬ったんだ!
「……なぁ。感動しているところ悪いが、そろそろツッコんでもいいか」
えっ、エイカさん。ツッコむって何に?
『まさかこの我が掬われるとはな…』
「いえ。俺がこの領域に来ることができたのは、家族と友人たちとの修行。そして、……今まで敗れ去った男性人たちの妄執という名の応援があったからです」
「最後は本当にありそうだからやめろ」
俺の隣には、クエストクリア記念に頂いた屋台の食い物の数々。ちなみにもらったのはすべて男性。量が量なので、エイカやウィンにも手伝って消化してもらっている。金魚と会話をしながら、俺は焼きそばを口に運んだ。
「……まぁ、後あるとすれば。妹にかっこいいお兄ちゃんを見てほしい気持ちがあったからですよ」
『ふっ、そうか。幼女の応援ほど強い力はないか』
「何言っているのかはわからないが、色々謝れお前ら」
俺と同じように焼きそばを口にもふもふするエイカ。ものすごく呆れたように言われたが、とりあえずもらった唐揚げを手渡してみる。受け取ったら機嫌が良くなったので大丈夫だろう
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