カナリア三浪
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あなた得意な肉体使う時、少し世界を縮めます。それは遠くにいる良き人の柔らかい心を渇かす物です。だからそれを奪います。この土地のミルクのように甘い意識を一滴あげますから、怒らないでくださいな。それは形あるものをゆっくり砕くように岩のひびに染み込んで、神の微笑むような彫刻を作り出すものですから。
すきまを満たしていたもの消えて
誰かの吐息が入り込む
愛なのかアクなのか
誰も気づかないだろう
俺はそれを携帯にメモした。
俺は忘れるという事に魅力を感じている。俺に磨かれたグラス達は、傷をつけないように柔らかい布で磨かれ、何度でも新品みたいになる。おれ自身、記憶を失って単なる魂の通り道になって、異世界とこの世をつなぐ媒体になれないだろうか。この体は限りなく澄んで心は空になり、葡萄色の、年月を経て深みを増した酒が『つつ』と注がれ、みなそれを口にして頬をゆるめる。幾多の魂に触れながら、つるりと磨いてしまえば、またクリアな自分に戻る。
通り過ぎたことのない、理解しがたい誰かの雨は、幾人もの意識を介して俺に降る。俺が背負うのは観客の乗せるおもり。複雑に絡まりあった思考が魂に雨となって降りそそぐ。その混濁は不安を呼んで俺にバネを使わせる。俺はこの肉体ですべてを背負ってひっくり返す。すべての色を変えて、素直に何かを受け入れる心、そこにあるようにと耕す。肉体とは革命の道具。俺は観客に酒を飲ます。しかしながらその酒は彼ら自身が注いだものだ。クリスタルの器。それは口当たりの良い嘘かもしれないが、と俺は思う。何度も、何度も、ひっくり返し、真実が顕になるまでひっくり返す。そのうち俺も真実になる。
あれ? 今、雨 降ってる? この店の客の雨、店長に降ってる。俺に降る雨は誰の雨。今は休憩中だぜ。
昔は未熟ゆえ雨が降った。この丸い鼻に、重いまぶたに。目の下の隈に。時を重ねて背が伸びて、言葉の重みを知るようになって、次第に中身が膨らんでバネを得た。「プレッシャーの無い世界で、楽々生きている奴は馬鹿だよ」そう言ったことがあった。その言葉は誰かを揶揄し、同時に誰かをリスペクトした。言葉を発するたび、心が落ち着く気がした。この雨は俺の経験に降る雨か。どこに降っている? 経験の中に魂を濁す何かがあったか? それが分らなければ、バネの効かせようがない。意味も知らせず胸が痛くなった。
俺が思春期に外見のコンプレックスで親ともめた時、親父が言った。母さんは自分がお腹の中にいるとき美しさを求めすぎた。神に美しさをくれと頼んだから美しく生まれた。神様は次の世代から美しさを奪っていった。それだけの話だ。
自分のことを好きになったキモい男を馬鹿にする、その心が強くなるにつれて美しさを増してゆく女がいた。
キレイごとを歌うあいつらが、汚い心で女をいじっている。
ペニス
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