カナリア三浪
[19/30]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
人に圧かけたらキラキラ光るんでねぇか?」
「黒人すごいッスよ。馬鹿にしちゃ駄目ですよ」
あつれきの中で生まれた声、助けを求めて響きました。その声は世の中の仕組みを変えよ、と神様の知らせ。みなで一所懸命燃やしたのです。その声、新しいつながりにたどり着き、熱は冷えゆく。
サブローは『楊貴妃』のグラスを出して、若いバーテンに渡した。カウンターには幸せそうな二人連れがいる。サブローはこのカクテルの造り方は知らない。複雑な形をしたグラスだけれど、磨くのに時間がかかるから暇つぶしにはなるんじゃないかなとだけ思う。まだカクテルを進んでは覚えない。プライドなのだろうか。サブローの中に意固地な彫刻家の姿が浮かぶ。石の中にすべての念を注ぎ込むよに、とても遠回りな世の中への反骨心。
誰かを動かしたという実感は、確かに間違いを犯すのです。天から授かった真実あらば、それを共有する友 現れ道を同じくするでしょう。
「歌わなくなってなんぼになる?」おっちゃんが尋ねる。
「歌ってますよ。ちょくちょく」サブローが答える。
自分だけが売れる事を望んでしまうことを隠している。
競争はもう始まっていて、風の噂では五百万人が参加しているということです。ゴールは神の頬に触れることを許されることだそうです。
「歌、考えてくれって頼まれているんですけどね」
「キレイごとじゃねぇだろうな」おっちゃんはその話に敏感だ。
炎には様々な意味があります。その熱で巻き上がった煙を、神様に届けることも一つ。花火のように心を打ち上げて、眼のよい人に歌われることも一つ。魂の色を眺める人多し。
「近道はねぇ」おっちゃんが言う。
「近くないですよ」サブローが言う。
トンネルがあることを知った不満者が腹の奥から望むことは、一足飛びに天まで跳ね上がることですから、人の期待を背負う人は気をつけなければなりません。あなたの頭にも人が乗り、燃えるような邪気を放つでしょう。
サブローは遠くを見ている。それは、最も遠い人と結ばれなければならないと、思い込むような目で。
訳のわからない話は、人々の中で、それぞれの意味を持ち、人類が熟するのを待っている。
あなたの黒い所
大きくぷくぷく膨らんで
白い私を押しのけて
世界の中に入ってゆく
それは痛みを伴うから
私は助けを呼んで
その人達が想いを打ち上げた
この街には腕のいい職人がいて
とても高く届いたから
早晩メスを持った名医が舞い降りて
国境の線を引くでしょう
サブローはグラスを磨きながら、薄い膜を破る。歌を作るにはグラス磨きがちょうどいい。国境? 解らんな。裏に下がって、まかないを食べるサブローは、下衆の脳みそから一滴何かを絞りとろうとしていた。
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ