カナリア三浪
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なる独りよがりという意味かな。それとも他人とつながっている部分を、うまい具合に和解に持ってゆきたいという意味か。その考えは異国の料理みたいに、その味を理解することができない。「愛が、嘘と真実を別ける? そう言った?」
「正義が好きかも」
「その答えに至るまでどんな行程があったの?」
「セックスの回数だけ」彼女は笑っている。
「他人とつながるって心地いいの?」
「そんな人、少ない」
「俺のアレが間違いなら、いずれ腐り落ちてしまうの?」
俺の体に嘘はないだろうか? 誰が自分の存在の嘘の部分。それを理解できるだろう。彼女は体を重ねるたび、どんな確信を深めているのだろうか?
翌朝、地下鉄で帰る。早朝の地下鉄で、朝帰りの若い女が汚い言葉で知らない誰かを貶め続けている。数々のミュージシャンが心を込めて歌った歌で育ったのがこれである。その笑い声、気に障る怪鳥音。
あ、そうだ、コーヒーメーカーの名前『デロンギ』だった。知らない人に『東南アジアにいる怪鳥の名前だよ』といったらそのまま通じるだろう。
あまやかな毛布が降りてきて体を包み、隣に座った女への好意をすすめる。体の内に錆があるのを感じる。じっとしている。もしかすると、彼女は俺の中に密かに国境の線を引いたのかもしれない。
気高い生き物みたいに
愛し合っているうちに
あの人の顔が
サルに見えてくる
君への愛で
明日まで行けたら
僕ら何になれる
携帯にメモしておいた。『僕ら何になれる』本当に何になれるのだろう?
サブローはグラスの首を持ってクルリと返し、白い布きんで拭いている。
この国の花火師は良い腕を持っていて、多くの人を裏返す。自分がシロであると知った時、打ち上げ花火は咲くのです。
「もう慣れたかい?」おっちゃんが尋ねる。「酒は作らねぇのか」
「飽きるまで磨きますよ」サブローは答える。
磨き上げた脳みそは、天に届く柱になる。その柱、心をつなぐような甘いことはいたしません。すべてばらばらにして、等しく天からの罰を配るのです。
「さっきからグラス、ライトにかざしてるけど何だ?」
「この、柔らかい布きんでも、傷つかないのかなって」
柔らかい声が好きな愛欲に狂った人。まとわりつくから大火のように焼いてしまいました。
「男が仕事に燃えなきゃ何に燃える?」おっちゃんが尋ねる。
「グラス、溶けるまで燃えますよ」サブローは笑っている。
世紀を超えた炎で燃えた記憶。その炎で溶け出した鉄が、今は冷えて意識を固めています。
「石炭って燃えると白くなるんですか?」サブローが尋ねる。
「いや、しらねぇ。いや、白くなる。小さい頃、学校で燃やしてた」おっちゃんが答える。「炭って圧かけるとダイヤになるってな。そしたら黒
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