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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
番外編 「雨が降る (後編)」
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たー・・・るちーあ♪」

歌って初めて、楯無は自分が本気でベルーナの詩に夢中になっていたことに気付いた。時間にして3、40秒程度のわずかな時間であったが、楯無はその間自分の役割を完全に放棄していたのだ。
それと同時に遅れながら彼女は何故ベルーナが歌ったのかに気付いた。自分自身の「最後まで聞きたかった」というリクエストを聞いて、少しだけサービスしてくれたのだ。

「・・・さっきの曲と違うのね。一瞬外で雨が降ってることを忘れそうになるほど・・・良かったわ」
「・・・・・・あの曲は、僕はそんなに好きじゃないから」
「ねぇ、聞いていい?どうして歌声聞かせてくれたの?」

「貴方は・・・歌の話以外は、どうでも良さそうだったから」

呼吸が一瞬止まりそうになった。
ベルーナはそれだけを言い終えると、何も言わずに部屋を後にした。
呼び止めようとしたが、動揺の所為か上手く出す言葉が見つからず、機を逸した楯無は自分のベッドにバッタリ倒れ込んで天井を見上げた。その表情は、暗い。

「どうでも良さそうだった、か・・・」

楯無が本音を交えて喋ったのは、確かに歌の話だけである。他の会話は事務的なものだったり、彼の様子を伺う意図があったり・・・それを、彼は本能的に感じ取っていたようだ。

ベルーナは男性IS操縦者の中で最も優先度が低い。それは彼に操縦者としてもそれ以外の要素でもとりわけ注目するところが無い事に起因しており、学園は男性IS操縦者のうち誰かを切り捨てなければいけない状況になった場合にベルーナを真っ先に切り捨てると決めている。
無論全員が全員生き残れるよう手は尽くすが、組織のトップとは限られた時間の中で最善(ベスト)ではなく次善(ベター)を決断しなくてはならない時が存在する。”楯無”の名を名乗る者として、楯無にはベルーナを万が一の時に見捨てる覚悟があるのだ。

そしてベルーナはそれをどこまでかは知らないが感じ取って、その上で自分の要望に応えた。
彼はひょっとして、あなたを見捨てますと伝えれば、それを受け入れるかもしれない。
恨み言も言わず、死ねと言った楯無を責めることもなく、死ぬかもしれない。

それは、自分が”そういう”人間だと認識されているようで。
そして、本当に自分が”そういう”人間であるかのような気がして。

「ちょっと・・・凹んじゃうなぁ」

雨は降り続ける。自分の心境がそのまま具現化しているような気がした楯無は、その思考を誤魔化すように『サンタ・ルチア』を口ずさんで気を紛らわした。

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