XIV
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
風花が行方不明になったと知ってからの乱心だってその影響だろう。
情がないとは言わない、だが少し前の俺ならあそこまで無様は晒さないはずだ。
それでも現状は堂々巡りで進まない。
進むことも戻ることも出来ないなんて、性質の悪い演目だ。
こんな舞台で踊り続ける役者に甘んじるなんて真っ平御免。
舞台ごとぶっ壊して役を降りてやる。
「……私は、自分を必要としてくれるなら、嫌なことから逃げられるのなら喜んで力を貸したい」
少しの沈黙の後にポツポツと語り出す。
えらくネガティブな言葉だが、そこに卑屈さは感じられない。
「――――以前の私ならそう思ってた」
俺の身体に柔らかな感触が伝わる。
凭れ掛かるように抱き着いて来た風花は――とてもいい匂いがした。
「けど、それが駄目なんだよ。逃げたり、キーくんに頼ってばかりで……それじゃ駄目なの」
耳元で囁かれたせいで若干くすぐったいが、振り解くわけにもいかない。
流石の俺もそこまで空気を読まないわけではないのだ。
「このままじゃ、置いてかれちゃう。私、歩くの遅いから」
「風花……」
「昨日ね、キーくんが戦っているところを見て思ったの。どんどんその背が遠ざかるって」
涙声で風花は告げる。
憧れてた、強くて、何でも出来る俺に憧れていたのだと。
「ずっと立ち止まってたら、きっとキーくんは遠くへ行っちゃう」
遠くへ、か。
俺は既知を打破した時、どうなるんだろう?
そもそも本懐を果たした後のことなんて考えてもいなかった。
「だから、私変わりたい。強くなりたい。その背を追うんじゃなくて、手を引かれるんじゃなくて――――」
抱き合った体勢でよかったと思う。
向かい合っていたら、
「――――あなたの隣を歩いていたい」
眩しすぎて風花を直視することが出来なかっただろうから。
「私、特別課外活動部に入る。けど、それは逃避のためじゃない」
「じゃあ、何のために?」
「キーくんの力になりたいから。他の誰でもない、あなたのために。だから手伝わせて」
「お前……」
「一緒に頑張ろ? 二人なら、きっと既知を超えられる」
…………その言葉に俺は何と返せばいいのだろう?
あまりにも眩しすぎる。
強い人間だ、変わりたいと言うが、もう十分変わっている。
俺は風花を侮っていたようだ。
並びたいなんて言うが、とっくにこいつは俺の先を歩いてる。
「偶にゃ御法に触れることだってするぜ?」
「結構な頻度でしてると思うけど……うん、覚悟は出来てる」
「ぶっちゃけ、俺はお前が思ってる程大それた人間じゃあない」
「それはキーくんの主観でしょ? 私が見てるものとは違う」
「後悔するかもよ?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ