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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
幕間『漸動』
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は数多の工具が用意されており、さながら大型機械のガレージの様だ。
その一角に、いくつもの中空電子画面(マルチモニター)が壁一面に展開された部屋があった。
画面には、黄昏色の装甲をもつIS――真行寺修夜の『エアリオル=ブラスト』と、彼自身が戦う姿が映し出されていた。
戦っている相手は、漆黒の巨人――IS学園を襲った無人機だ。
そしてこの部屋で、両者の戦いをいくつもの画面と視点で観察する人影があった。
やや赤み掛かった腰に届く長髪で、揉み上げを三つ編みにしてある。頭には何の冗談か、バニーガールの付けているような、ウサギ耳を模したカチューシャをつけている。また空色の布地で縫われた南ドイツの民族衣装(ディアンドル)風の腰にエプロンの付いたドレスが、機械的な空間とミスマッチを起こし、彼女の存在感をより浮かび上がらせていた。
画面を見つめる顔は端正だが、垂れた目と下がり眉のせいでどこか緩い雰囲気を醸している。
豊満な胸とグラマラスな肢体は、衣装の影響もあってより胸を強調したように見える。
「はにゃ〜ん、やっぱりカッコいいなぁ〜……」
画面の中の修夜を追う女性の声は、少し幼く甲高く、甘い声色だ。
コンソールを置くカウンターに両肘を突き、手の甲に顔を乗せ、終始口元を緩ませている。
それからコンソールのボタンを一つ押し、画面を一斉に止める。
止まった画面には、精悍な顔つきの修夜がズラリと並んだ。
「むふふ……っ、あんな可愛いかったシュウちゃんが、こんなイケメンに育ってるなんて、(たばね)さんのハートはキュンキュンのだ〜。きゃっ!」

束――

そう彼女こそ、この世界にIS――インフィニット(Infinite)ストラトス(Stratos)を生み出し、世界の秩序と均衡を大きく覆した“天才”にして、世界がその動向を追う“異端の革命児”、【篠ノ之(しののの)(たばね)】である。
ある者は彼女を“科学の女神”と称賛し、ある者は“電子の魔女”と敵愾心を抱く。
ISに関わるものすべてがその名を知る、今代一の女性科学者である。
世間では浮世離れしたふわふわとした雰囲気と、突如として行方をくらましたその言動から、奔放で謎多き人物とされている。
分かっていることは、年の頃は二十四であること、ISの生みの親であること、初代IS世界大会覇者(ブリュンヒルデ)・織斑千冬のセコンド兼調整技師だったこと、六年前に突如失踪して捜索が続いていること、などそれぐらいである。
彼女の人物性や失踪の真相には諸説あるが、どれもいまいち信憑性がない。

*すでにISに飽きて別の発明を始めている
*謎の組織に追われている
*ISを利用した私立軍隊を創設し、世界を切り取る準備をしている
*理由などなく、ただ気ままに世界を引っかきまわして楽しんでいる
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