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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
幕間『漸動』
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どこか近くで、ケータイの着信音が鳴り響いた。
「あっ……、すみません、失礼します」
どうやら楊のだったらしく、手に提げたバックからスマートフォンを取り出し、電話に出る。
中国語で話しているため、千冬と真耶には内容は分からないが、どこか腰の低い感じではある。
ところが話しはじめて間もなく、楊の様子が変わった。
まるで雷に撃たれかのように微動だにしない。
そして次の出来事が、千冬と真耶を困惑させた。

楊が、震えながら泣きはじめたのだ。

それからしばらくは、口元を手で覆って嗚咽を抑えながら、何とか電話に受け答えする。
そして電話を切ると、人目もはばからずにその場で泣き崩れたのだ。
「ど……、どうしたんですかっ!?」
それを見てとっさに真耶が傍に駆け寄り、事情を訊こうと楊を宥めはじめる。
千冬は一旦楊を休ませるために、手近なベンチか人目を凌げる場所を探す。
ふと右手側を見ると丁度良い壁際のベンチを発見し、真耶と楊をそこへと誘導した。
しばらくは泣くばかりだった楊だったが、数分も経つと落ち着きを取り戻していった。
「楊さん、何があったんだ?」
千冬は正面から屈んで視線を合わせ、顔を覗きこむように楊に尋ねた。
「……妹が……」
「……妹さんが、どうしたんだ……?」
「……目を……覚ました……って……!」
「え……」
「さっき……病院から、その連絡が……あったんです……!」
突然の知らせだった。
病院の話によれば、数時間前に看護師が巡回中に彼女の妹の目覚めに気が付き、先ほど検査を終えたところだったらしい。
現状では、特に後遺症などの兆候は見られないという。
「良かったじゃないか、楊さん」
「おめでとうございます……!」
二人からの激励に、楊はただ頷きながら応じる。
神様がいるというなら、なかなかに粋な計らいをしてくれたものだと、千冬は感じるのだった。
「渡りに船だな楊さん、これからは妹さんと一緒に、失くした時間を埋めていける」
千冬の言葉に一瞬目を丸く楊だったが、
「はいっ、そうします……!」
最後は明るく答えるのだった。

三人のベンチに、和やかな雰囲気が漂っていた。

寸の間、ある言葉が思い出され、

(まったく、相変わらず人が悪い――)

千冬は内心でそんな風に独語し、苦笑するのだった。


――――

ところ変わって太平洋、公海上――


何処とも分からない無人島の地下に、その場所はあった。
無数の機械と金属パーツが転がる、南海の大自然とは対照的な近未来的で薄暗い空間。
人ひとりが衣食住と、何らかの研究を成すに必要なだけのスペースが確保されている。
それと同等の面積の空間に、無数の金属製のパーツがリフトやウインチ、ジャッキなどに固定されている。そばに
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