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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
幕間『漸動』
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日曜日、国内の某国際空港――。
人の行きかうフロアの一角で、見目麗しい三人の女性が立っていた。
「このたびは、何から何まで、本当にありがとうございました」
穏やかな笑みを浮かべながら、楊管理官――否、元管理官・楊麗々が、織斑千冬と山田真耶に対して深々と一礼をしていた。
「実際、私独自の清教官への素行調査も、完全に行き詰っていたうえに、上から釘を刺されて、断念せざるを得ないところだったんです」
「本当に……、お辞めになってしまうのですか……?」
「はい、それが私なりのけじめですから」
真耶の気遣いを感じながらも、楊の決意に揺るぐところは無かった。
「義を正すため、妹の無念のためとはいえ、私が国に刃を向けた不忠義の臣であることに、何ら変わりはありません。のうのうと管理官を続けても、いずれは本省の競技会とも折り合いが悪くなるのは、分かりきったことですから」
無論、後悔がないわけではなかろう。
楊とてIS学園担当の管理官となるべく、多くの努力と苦労を積み重ねてきたはずだ。
それを辞するという決断に、いささかの葛藤もあっただろう。
その高潔な意思を復讐に染め上げたのもまた、清周英という男であり、別の意味で彼女も清に人生を曲げられたと言っていいだろう。
だが今は、怨嗟のしがらみから解き放たれた心地を、しみじみと感じる楊だった。
「これから、どうするつもりだ?」
千冬が真っ直ぐな目で、楊に向かって問いかける。
「そうですね、ひとまず落ち着いたら、妹も向こうの病院に移そうと思います。今までゆっくりと、傍にいてあげられませんでしたから……」
「そうか……」
楊の返答に、千冬はただそれだけを返す。
それでも妹と弟の違いはあれど、同じ年下の血縁をもつ者として、二人にはそれだけで通じるものがあった。
「そういえば、夜都衣先生はどうなさったんですか。一緒にお見送りのはずじゃあ……?」
真耶はこの件にもっとも縁深いはずの、夜都衣白夜がいないことに気が付いた。
「急用が入ったそうだ。先生から言伝(ことづて)は受けている」
「そう、ですか……」
千冬からの言葉に、楊は少し残念そうな顔をした。
「『そのうち運も向く、仲良く達者に暮らせ』だそうだ」
「あら……、見透かされていましたかね?」
「あの人のことだ、そのぐらいは察していたんだろう」
自分が妹を連れていくことを見抜かれ、楊は少し気恥ずかしい気分になった。
千冬も白夜との付き合いが長いため、その考えを推量することが出来た。
千冬にとっては白夜は、“師”と呼んで敬服し得る特別な年長者であり、武においては目に見える“遥かなる高み”でもある。
突拍子の無い言動に肝を冷やされることもあるが、そうした闊達な在り方も含めて、千冬は白夜に特別な思い入れを持っている。

――ピリリリ…

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