加持編 血と汗の茶色い青春
第四話 修行
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た。
彼女と聞いた訳じゃないが、まぁ彼女で間違いないだろう。髪は肩にかからない程度で、少しキツめの目つきをしている女だった。
お勉強私学に居ながら、兄貴もちゃっかりしてやがるなと思ったよ。
「初めまして、加持亮司と申します。兄が常日頃からお世話になっております。」
俺は体を10度の角度に保って会釈した。
何とも思わずにそうした。
是礼の野球部はこのお辞儀の使い分けだの何だのに殊更に厳しく、もはや勝手に体が状況を選びとって角度を使い分けるようになっていた。
「……」
兄貴の彼女が目を丸くしていた。
兄貴も目を丸くしている。
一体どういう事だ?
何かおかしな事したのか?
俺はそう思った。
「憲司の弟さん、すごく礼儀正しいわね」
「あっ、うん…おかしいなぁ。今まで女の子見るとすぐバストサイズなんか聞いてたって言うのに…」
兄貴の彼女が感心して、兄貴は首を傾げている。
そこでやっと俺は気がついた。
是礼のスタンダードは、そこらの高校生のスタンダードなんかじゃない。テレビも食堂に備え付けのものだけで、携帯も持たせちゃもらえない隔絶された環境に身を置いて、すっかりその事を忘れていた。
正月に親戚と会う時も、これら染み付いた敬礼の癖と言葉使いはちっとも治らなかった。
無駄に修正して、是礼に帰った時に粗相でもしたら大変なので、治す気もさらさらなかったのだが。特に祖父母は、こんな風になった俺を、何故かとても「立派になった」などと喜んでくれた。名門というブランドがどのようにしてできていくのか、その一端を見たような気がした。
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