導入編
麻帆良編
導入編 第8.5-M話 千雨という少女
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く隠していたのだから。
二人が纏う闇のにおいは昔、暗殺を生業にしていたという里の老忍が見せてくれた闇に似ていた。
通常、闇を纏うモノはその深さに相応しいだけの隠し方を身に付ける。
少なくとも拙者は山でそうとわかる闇の者など価値が無いと教わった。
暗殺者にとって潜伏時に手練れである事がばれれば無用な警戒をうみ、その価値を著しく減ずると。
拙者は暗殺者ではなく戦闘員として訓練を受けているゆえ、普段は一般人に紛れる必要がない。
むしろ、わかる者には見せ札として手練れである事はバラしつつ、その実力を読ませない事が肝要だと習った。
であるからして、拙者はこの生来の性格を殆ど矯正されることもなく生きてきた。
逆に言えば長谷川殿はあれだけ深い闇を纏う生き方をしておきながらそれを殆ど隠さなくても良い生活をしてきたという事…
拙者の常識で考えれば、必要ならば積極的な殺しを躊躇わず、
それを威嚇及び抑止力とするヤクザ者の世界でも狂犬と呼ばれる護衛や用心棒の類…
だがその様な人間が日本の表社会に学生生活をしに来るだろうか?
そんな事を考えていると二匹、いや二人の歌と踊りも終わった様だ。
楽しそうに笑い会うと2メートルほど離れて向かい合った。
龍宮殿が何かを取り出し、口元にあてる…ハーモニカの様だ。
ドから順にレ、ミと吹き、それに長谷川殿が声であわせる。
そのまま順に1オクターブ高いドまで達し、元のドまで下がる。
二人は歩みよりくるりと回って背中合わせになる。
そして次の曲が始まった。
その歌声と音色は先程とうってかわって優しいものであった。
昼の歌声が歌姫、先ほどのが狼だとすればこれは…人魚か。
彼女達が纏う闇はより一層深みを増した様に思う…が、もはやその闇からは狂気を感じなかった。
それは平和で静かな夜の一時にも似ていた…いつしか拙者は二人の奏でる歌の世界に吸い込まれていた
まさに獲物を誘う『魔物』の歌声と言うべきか…
歌は続く
歌詞は英語で、理解が怪しいが、それでも想像はついた。
これは…光に生きられなくなった者が闇に身を投げる歌ではないか?
時に皆を楽しませる楽師のように楽しげにうたったかと思えば、
ある時は餓えた獣の様な、狂気を孕んだ闇を纏い、
その直後にはその闇が泣く幼子を優しく抱き締める様な闇になる
彼女達の居場所は良くも悪くも日の当たる場所ではないのだろう。
それだけが今の拙者に理解できた事だった。
だがそれでも、拙者は彼女達は外道ではないと判断していた。
今日の千雨の、レインの歌声は今までで最高の出来だったと私は感じた。
『マナ、良い音色だったよ』
『お前もな、やはりレインの歌声は良い。今までの中でも最高のできで嬉しいよ
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