第一話
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もあったのかよ」
ついつい話しかけてきた男に、べらべらと迂闊なことを喋ってしまったのだ。
◆
「はっはっは! そりゃあ、幸運だったな!」
「馬鹿言え、災難に決まってるだろうが。二時間だぞ二時間!」
話しかけてきた男は、心の底から愉快げに笑った。
男の印象を一言で言うなら、『不健康』だろう。俺より頭一つは高いだろう身長に加えて、手足が不自然なほどに長い。ぼさぼさの黒髪の下にのぞく黒目は眠たげな細めで、顔色も日本人離れしているほど色白。寝転がってるのを話しかけるほどに仲がいいのは、コイツ……『シド』が、俺と同じβテスト経験組だからだ。
「まったく、言いふらすんじゃねえぞ」
「わあってるさ、俺は『対人情報』は売ってねえよ、アルゴと違ってな」
そしてもう一つ。この男、このSAOでも有数の『情報屋』だ。
かの有名な情報屋、対人情報やシステムの抜け穴、アイテム相場や狩場効率までありとあらゆる情報を売り捌く『鼠のアルゴ』ほどではないが、この男は自分の専門分野……クエスト関係の情報ではアルゴに勝るとも劣らない情報の精度と速度を誇る。
だが、この男から俺の……まあ、なんだ、『ピンクの剣士』的な情報は洩れない。
この男もアルゴと同じく、それなりの『流儀』を持っている。
まあ、そうでなければ俺達βテスターは孤立してしまうのだから。
「っつーことは、キリトは向こう数日暇なわけだ」
「ああ、休む。休ませてくれ。今アスナの顔なんか見たらどうなるか俺にも分からん」
「……おう。それならおあつらえ向きだな」
そんなことを考えていたせいで、俺は気づくのが遅れてしまった。
胡散臭さ前回の隣の男が、素晴らしく嫌な笑顔を浮かべていることに。
そうだった。
「ちょおっと頼みたい仕事があるんだなぁ、『ピンクの剣士』君」
……言いふらしはしないが、コイツもそれなりな性格をしていやがった。
ここまでのSAO生活で重々知っていたのに、また俺はあっさりとはめられてしまった。
それほどに、俺の思考が乱されていたのだろう。
例の魅惑の下半身装備によって。
……まあ、この時はまさか、思いもしなかった。
これよりまだまだ深い煩悩地獄の底なし沼に、俺が片足突っ込んでいるということに。
◆
訪れたのは、最前線からは随分と下層に存在する、夜しか開かないとあるダンジョン。
……かつて高レベル高経験値の吸血鬼が多数生息したために経験値稼ぎ目当ての『攻略組』で賑わった場所だったが、ゲームのバランス調整システムであるカーディナルによってMobのポップと得られる経験値が修正されてからは訪れる人
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