第6話 オッサン
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分かったねえ。まったくもってその通りだよ。……坊や達、この岩を動かすのを手伝ってくれないかい?」
「おう。良いけど、この岩ほんとに動くのか? すんげえ、でけえぞ。というか、おっさんがどうしてこんなデカイ岩の下敷きで案外平気そうなのか不思議だ」
サトチーにいさんが言うように、岩はぼくたちの身長ぐらいある。とてもじゃないが動くとは思えない。
「ああ、それはおじさんが探していた薬草が岩の下にあるくぼみにあってね。取ったは良いが、身体が引っかかって動けなくなってしまっただけなんだよ」
「ああ、それで仰向けじゃなくてうつ伏せなのか」
う〜ん、とサトチーにいさんはうめいて、ポンっと手を叩いて言った。
「良い考えが有る」
そう言ってにやりと笑う。
「おいおい、坊や達。なんだったら村の大人達を連れてきてくれれば良いから……というかそっちの方が良い気がするんだが」
「まぁまぁ、ここは俺達に任せてください。沈没寸前のイカダに乗ったつもりで安心して下さい」
「安心出来る要素が皆無なんだがそれは……」
サトチーにいさんは、ぼくを呼び寄せて小声で話す。
「おいリュカ、オマエ親父に最近魔法を教えて貰ってたよな?」
「うん」
「岩に向かって打ってみろ」
ぼくはひとつ深呼吸して岩に向けて手をかざす。
「ん? ぼうや、何をしてしているんだい? おじさん凄く嫌な予感がするんだが……」
「バギ」
ぼくの手から出てきた風は、岩の表面をがりがりって削っていく。ぼくも吹き荒れる風の反動で後ろに転んでしまった。けれど、おじさんはもっと大変だった。
「ぎゃああ、痛い! 岩の、岩の破片がぁ!」
ちっちゃい破片がおじさんの顔に当たったようで、悲鳴を上げている。なんだか、すごく申し訳ないことをしてしまったようだ。
「ご、ごめんねおじさん」
「い、いや。ちょっとすごく痛かったけれど大丈夫だよ。それに岩も今の魔法でだいぶ削れて軽くなったようだし、これなら……ふんっ!」
おじさんが掛け声を上げると岩がごろりと転がっておじさんが這い出てくる。
「うん、ちょっと予想外のこともあったけれど、君のおかげでなんとか出られたよありがとう、っとこうしちゃいられない。早く薬草を作らなきゃ」
お礼もそこそこにおじさんはすっ飛んで行ってしまった。
「俺たちも帰るか」
洞窟もちょうど行き止まりだった。ぼくたちは暗い洞窟をゆっくりと戻っていった。
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