暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは 〜黒衣の魔導剣士〜
第10話 「別れの時」
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壊すような無粋な真似をするつもりはない。黙って奥へと向かおうと移動し始める。

「ぁ……夜月くん」

 こちらの行動に気が付いた高町が声を出したことで、周囲の視線が全て俺に集まった気がした。
 高町はテスタロッサにご執心じゃなかったのか、と思いながら一度ため息を吐き、首だけ回す形で振り返った。

「まだやるべきがことが残ってるだろ?」

 ★

 俺はテスタロッサとアルフと共に、プレシアの元へと走っている。高町とユーノは魔力炉を止めるために別行動だ。
 進んでいる内に何かの惑星の上にいるのではないかと思うような景色に変わった。テスタロッサやアルフが気にした様子を見せずに進むので、俺も気にせずに進むことにした。
 突如天井部分から走った水色の閃光。崩壊と共に現れたのは、執務官のクロノだった。ここに来るまでに手傷を負ったようで、血が顔面の左側を流れている。

「知らないはずがないだろう! どんな魔法を使っても、過去を取り戻すことなんか出来やしない!」

 ふと頭の中に、クロノとした会話がよぎった。彼はさらりとだが、父親を亡くしていると言っていた。俺よりも年上であるが、年齢で言えば子供だ。父親を亡くした時は、きっとプレシアと同じようなことを考えたのかもしれない。
 いや、今でも思うときがあるのかもしれない。
 現実というのは、こんなはずじゃなかった……ということばかり。過去を取り戻せるのなら取り戻したい。両親の死を受け入れている俺でも、そんな風に考えてしまうことがあるのだから。

「…………ぁ」

 プレシアの元まで辿り着いた。テスタロッサはプレシアの憎悪の顔を見て声を漏らしたが、プレシアの突然の吐血、ひどく咳き込む姿を見るとすぐに駆け寄って行った。

「……何を……しに来たの?」
「――っ!?」
「消えなさい……あなたにもう用はないわ」

 プレシアが発した言葉は、テスタロッサを拒絶するものだった。だが、テスタロッサは先ほどのように崩れるようなことはなく、彼女に返事を返し始めた。

「あなたに言いたいことがあって来ました」

 はっきりとそう言ったテスタロッサを、俺やアルフだけでなく、クロノも黙って見守ることにしたようだ。

「私はただの失敗作で、偽者なのかもしれません。アリシアになれなくて、期待に応えられなくて……いなくなれと言うなら遠くに行きます」

 プレシアの言うとおりにすると言っているが、声には寂しさが混じっている。
 アルフから聞いた話では、テスタロッサは拒絶の言葉以外にも様々な暴力を浴びていた。だがそれでもテスタロッサは、プレシアのことを母親だと今も思い続けているのだろう。好きでいるのだろう。そうでなければ、寂しさの混じった声も自分が悪いといった言葉も出ないはずだ。


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