第10話 「別れの時」
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かいない。雷光の発射された方向に視線を向けると、黒衣に身を包んだ少女――フェイト・テスタロッサの姿があった。彼女は俺の近くまで来ると、言い淀みながらも話しかけてきた。
「あなたも……来てたんだ」
「ああ」
「……どうして来たの?」
テスタロッサからそのような問いをされるとは思っていなかったが、彼女にはジュエルシードに興味がなかったこと。管理局の到着以降、現場に顔を出していないことを知られている。崩壊しそうなこの場に、理由もなく俺がいるとすれば最もな問いだろう。
彼女の問いに答えるのは簡単だが、個人的な理由ばかり。その中にはテスタロッサの行く末が気になるといったものも含まれているため、あまり言う気にはなれなかった。
「非常時には協力するって約束があっただけだよ」
「そうなんだ……」
「……行動を起こすように煽ったのは俺だけど、君もよく来たね」
「うん……私達の全ては、まだ始まってもいない。本当の自分を始めるために、今までの自分を終わらせるために、私はここに来た」
テスタロッサは、強い思いを感じさせる瞳を返し、はっきりとした口調で言った。
母親から拒絶の言葉を受けて間もないというのにここまで持ち直すとは、彼女の精神力は俺なんかよりも遥かに強いようだ。
高町やテスタロッサを見ていると、彼女達の心の強さに憧れにも似た感情を覚える。それが他人と深く関わろうとしない自分を変えなくては、といった思いも抱かせた。
「…………君は強いな」
「え?」
「何でもないよ……それよりも先に進もう」
庭園が崩壊するまでの時間は着実に減っているはずだ。おそらくテスタロッサは最初に高町、そのあとでプレシアの元に向かうだろう。鎧達の妨害がある以上、ゆっくりしていてはプレシアと話す時間がなくなるかもしれない。
急いだほうがいいという考えが伝わったのか、テスタロッサはすぐさま俺の隣に来た。
高町との戦闘を見ていた限り、彼女の最高速度は現状よりも格段に速いはず。並行して移動するということは、こちらのことを気にかけてくれているということか。
彼女達ほどの魔力を持っていない俺にとっては、戦闘で消費する魔力が減るためありがたいことではある。だが、俺のせいでテスタロッサの行動の意味がなくなるような事態になるのは心苦しい。
「俺のことは気にせずに、先に進んでくれていい」
「……その」
俺の言葉に彼女は、どことなく申し訳なさそうな顔を浮かべた。
そういえば高町と彼女はついさっき決闘を行ったんだったな。大規模な魔法も使っていたし、回復の早い年代だといっても、この短時間で魔力は完全に回復するわけがない。いくら魔力量があるとしても、今残っている魔力は俺よりもない可能性が高いか。
「悪い、こっちの考えが浅かった。
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