第二章
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第二章
巨人も他のチームもだ。杉下の前にだ。完全に萎縮してしまった。
それ程までに杉下のフォークは知られ恐れられていた。しかしだ。
杉下はそのことに得意にならなかった。そのことにだ。
中日の監督である濃人渉はだ。こう彼に問うたのだった。
「驕らないんだな」
「フォークのことですか」
「ああ、それで勝っていてもか」
「驕ったら負けです」
まずはこう答える杉下だった。それにだ。
彼はだ。濃人にこうも話すのだった。
「フォークは危ないボールですから」
「危ない？」
「はい、フォークは危ないんです」
そうだというのだ。フォークはだ。
「ですから投げるのはわしにとっても諸刃の剣なんです」
「カーブやシュートとは違ってか」
「ええ、フォークはこう握りますよね」
具体的にだ。杉下はだ。
そのフォークの握りをだ。濃人にも見せた。そのうえでだ。
ボールの挟みを少しずらした。それも見せて話したのである。
「下手すればこうしてです」
「すっぽ抜けてか」
「それで投げたら棒球になります」
棒球なぞ投げればどうなるか、それは言うまでもないことだった。
「下手しなくても打たれます」
「ここぞという時に投げるのは勇気がいるか」
「そうなんです。それがフォークです」
「そうか。そうしたボールなんだな」
「ですからわしはフォークはあまり投げないですよね」
「ああ、そうだな」
本人に言われてだ。濃人もだった。
そのことに気付きだ。そして言うのだった。
「一試合に精々十球程度だな」
「多く投げたら駄目なボールですから」
「駄目か、あれは」
「読まれれば打たれます」
これはどのボールにも言えることだった。
「相手もプロですし馬鹿じゃないからですね」
「だから狙われればだな」
「打たれないボールはないです」
実際にだ。杉下自身も、彼のフォーク自体もだ。
やはり打たれたことはある。そのことで実際に経験しているからだ。今濃人に言えたのである。
「それにです。フォークは飛びます」
「ストレートや他の変化球よりもか」
「そうです。すくい上げられますから」
フォークは落ちる。それ故にだった。
打とうと思えば下から上にアッパーの要領であげる。それでそうなるのだった。
「本当に長打になりますから」
「スライダーやシュートだと横になるがな」
「カーブは斜めで」
その分だ。正面には打ちやすいがだ。上げるのはフォークよりもしにくいのだった。つまりフォークはその分だけ他の変化球よりも長打にしやすいということだ。
「その分です」
「そうか。フォークにも弱点はあるな」
「わしはフォークには絶対の自信があります」
その使い方にもだった。ただ投げるだけではなく。
「ですから
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