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乱世の確率事象改変
明けに咲く牡丹の花
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。秋兄は裏切り者じゃない。真名は前の連合の時に交換しただけ。あの人は目的の為なら最後はある程度手段を選ばない同類だしね。ほら、劉備の為なら平気で友達を切り捨てる所とか」
「それは私達を信じてくれたからこそです! あいつの想いを、バカにしてんですか!」

 暴れようともがく関靖を抑え付けて、耳元で甘く囁く。

「バカはあんただ。洛陽の酒宴の時に注意喚起したって事はその時点で見捨てる事を決めてたってこと。大事な友達とは口ばっかりで、下らない偽善者の成長の為にあんた達を踏み台にしたんだよ。どうして助けにこなかった? あの人がいるだけでもっと多くの人が救えたはずなのに。あんたよりも曹操と上手く交渉しただろうし、この戦の最中での張純の裏切りなんか絶対に起こらなかったのに」

 言い切って関靖の顔を見ると涙が零れだしていた。武人であろうと一人の人間。一番脆い部分を同時に突けばいくら覚悟を決めていようとぶれてしまう。
 油断したわけでは無い。ただ、極限状態で思考誘導に乗ってしまっただけ。老練の武人ならば笑い飛ばしただろう。心高き昇龍ならば下らないと苦笑しただろう。しかし、この年若く、劣等感が強い少女では耐えられない。
 今の内にめんどくさくないようにしておこう。

「じゃあそろそろ――――」

 腕と脚の骨を折ってから気絶させようと思った瞬間、真後ろからの異様な音によって横に飛びのく。
 見やると公孫軍の一人の兵があたしに向かって槍を突きだしていた。
 無駄話が過ぎたか。しかし……どうしてこんなにも気配を殺せていたのか。それに先程の一撃には殺気が全くと言っていいほど無かった。

「助かりました。せめてあと少しでも時間を稼ぎましょう」

 ぐいと涙を拭った関靖は武器を手に取って兵に指示を出し、足を引きづりながら一歩踏み出す。この場に感じる違和感がより大きなモノになるも、動き出そうとした関靖への対応の為に思考が中断される。
 そして、今にも飛びかかろうとした関靖のその腹を……公孫賛軍の兵士の槍が後ろから貫いた。

「あ……」

 目を見開き、状況を理解出来ていない関靖はたたらを踏んだ後に腹から突き出た白刃を眺めていた。

「……かはっ……」

 血を大量に吐き出し、後ろを向くと、その兵士は振り向いて逃げ出そうとする所。
 あたしはそこで気付いてしまった。その鎧は確かに公孫軍のモノ。だが、中着は白馬義従として統一されていた白では無く、さらにちらりと見える内部の軽装は袁家のモノ。
 トン、と両膝を地に付く関靖の横を駆け、逃げるその兵士を捕まえる寸前、逃げられないと悟ったのかその兵は、小さな短刀で己が首を切り裂いて自害した。
 誰がこのような事を思いつき、実行に移すのか思い至り、激情が胸を焦がして沸々と湧き上がる殺意があ
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