明けに咲く牡丹の花
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約されていく。
だが、如何せん彼女と自分では実力が違い過ぎた。騎馬に乗った状態であるのなら、もう少しはマシな戦いとなっただろう。
防戦一方による時間稼ぎでは無く、関靖は純粋に攻める事すら出来ないだけ。
鎖大鎌を想定して木々の立ち並ぶ林の中に逃げ込んだのだろうが、残念ながらこちらには隠し玉としてこの武器があった。一騎打ち専用のこの長い鉤爪は近距離専門なので滅多に使わないが予備武器としては十分。
関靖の身体にはそこかしこにキズがあり、その疲労は尋常じゃない汗の量と激しく上下する肩から見て取れる程。
こちらがそんな相手に攻めきれないのは殺してはいけないという制限があるからというだけ。
隙を見つけて武器を奪い取ろうとしても全てがギリギリで躱されてしまっていた。体勢を崩そうとしても体力の消費も考えずに無茶な身の振りで全てが避けられてしまっていた。
このまま長く続ける訳にはいかない。もう既に追いかけっこを終えて兵には他に敵がいないかを探すように言いつけ、一騎打ちを始めてから二刻強は経った頃合いだろう。どれだけの敵兵がいるかは知らないが、斗詩と猪々子ならば関の前あたりには余裕で追いつけるとしても、あたしが追いつけなければ捕獲しきれない。
「ねぇ、そろそろ降参して欲しいんだけど」
「殺せばいいじゃ、ないですか。出来るなら、ですけどね」
息も絶え絶えに軽く見下した笑みを浮かべてあたしに向けられた言葉は挑発。しかし、そんなモノは自分の十八番である為に別段気にするはずもない。
「分断された今、例え後半刻であろうと、長くお前を留める事が出来れば、私の勝ちです」
どうせ捨てる命なのだ、と言わんばかりの態度はずっと同じだったがどこか少しだけ違和感を覚えた。
「公孫賛が逃げられると本気で思ってるの? 顔良、文醜に加えてあたしの隊もいるんだから疲労困憊な公孫賛の軍じゃ無理でしょ」
何故、こいつはこんなにもそれを信じているのだろうか。状況は絶望的であり、いくら奇策で兵を減らしたとしてもこいつらが逃げたいであろう徐州までには届き得る。
にやりと笑った関靖は一つため息をついて口を開く。
「分断された、と言ったでしょう? お前の隊の練度の凄さは知っています。だからわざと……顔良と文醜の二人が抜けるまでは投入兵数を少なくしたんですよ。端っから私の狙いはお前とその隊だけですし、今頃伏撃で被害が増えてる頃合いですから間に合いません。ふふ、秋斗の策を私が改良してやったんです。どんな策か誰にも読めないに決まってます」
関靖の説明、後の蕩けた笑顔を見てぞわりと肌が泡立つ。このイカレた策はやはりあの人のモノだった。それがこいつの手によってあたしを殺す為だけに向けられている。その事実は自分に武者震いにも似た歓喜の震えを与えた
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