明けに咲く牡丹の花
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ら命を絶つだろう。屈辱の中、片腕を消失するという絶望を味わってしまってはもうどれだけ説得しようと服従などしてくれる相手では無くなってしまう。
公孫賛が死んでしまえばどうなるのか。
決まっている。行軍の最中に起きた反発具合から予想できるように、幽州内部で黄巾の乱のようなモノが起こり得る。民が為政者とここまで密に繋がっている土地など異常に過ぎるのだ。決起した民に釣られて参加するのは今も烏丸と戦っている幽州を守り抜いて来た精兵。公孫賛達が居なくても今回の侵略に対して守れている事から戦の相手としてもめんどくさい事この上ない。
夕は民が反乱する可能性も見越して公孫賛達三人の捕縛を命じていた。対して、郭図には異常な民の心までは分かりえなかった。
普通の国であれば郭図の方法は、厭らしいが利が多い。侵略の後の統治は容易では無いが、その方法ならば後に治めやすく、逃げられたとしても敵意の刃となってさらに苦しめる事が出来ただろう。
しかしあいつは抜けているのだ。
『お前達が攻めて来なければ自分達は幸せに暮らせていたのに』
そんな当たり前の憎悪の感情を向けられる事を甘く見過ぎている。
確かに民草の心は移ろい易い……だが全ての民の心がそうなわけではないのだ。
もし、関靖を逃してしまえば、例え公孫賛を捕まえようとも、殺そうとも、逃げられようとも民の決起に於ける優秀な火付け役となり、より大きな反乱に繋がってしまう。単独で公孫賛と合流するのはここに決死の覚悟を持って待機していた時点であり得ない。主の為にと動く関靖は必ず袁紹軍の邪魔をする為に、民の犠牲も気にせずに扇動し、行動を起こすだろう。
そんな事になってしまえば計画の全てが破綻するのは予想に難くない。こんな辺境の土地一つ迅速に治められない者が大陸制覇など笑わせる、と全ての諸侯に鼻で笑われることになる。
その時に動くのは誰か。まず違いなくあの女、曹孟徳は機を逃すはずが無い。それに倣ってせっかく懐柔した別の土地の豪族も掌を翻して行く。
後には反乱の制圧に時間が掛かれば掛かる程に自らの首を絞めて行ってしまう。
「クズめ。だからお前は夕に届かないんだ」
舌打ちと共に毒づき、迷わないよう木々にキズをつけながら走り続ける。
視界を遮る木々の隙間を縫って目当ての得物を探し続ける事一刻。自分の隊の兵士の野太い絶叫が遠くに聞こえ、笑みを深めてその場へと向かった。
†
猪々子と合流した斗詩は明の残した言伝を聞き、二人で部隊と共に異常な兵を殲滅しつつ林道を抜ける事にどうにか成功した。被害も気にせずに抜けた事と、怯えて逃げ出した兵が居たので連れていた数の約二割程度を減らしてしまっていたが。
しかしそこかしこに旗が立ち、未だちらほらと敵兵がその先にまで待機している事が分
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