明けに咲く牡丹の花
[5/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
済むけど。公孫賛も趙雲も殺したりしないから従って欲しいな」
「バカですね。私がここにいるという時点で捕虜になってもたかが知れてるのが分からないんですか?」
はっ、と笑いながら言われて結構気が合うかもと思った自分は変なのだろうか。どこかいじめたくなってくる。
どの点を突いたらこいつの心を揺さぶる事が、否、へし折る事が出来るのか。
急な嗜虐心が顔を出してゾクゾクと背筋に気持ちいい感覚が走る。自分の悪い癖が出てきてしまう。
苦痛に歪む表情が見たい。泣き出す顔が見たい。絶望に打ちひしがれる様が見たい。
その全てを抑え付けるのは必死だが、夕の望む未来の為ならばある程度を諦めるしかないようだ。
「にしし、なら力付くで捕虜になって貰うね。さあ、続きを始め――――」
「残念ですね。捕まえる事こそがお前の目的と分かったので逃げるが勝ちです。お前は頭がいいので私を逃がしたらこの地がどうなるか予想出来るんじゃないですか? それに……兵如きでは私の相手になりませんよーだ」
どうにか聞き取れる早口の後、べーっと舌を出して木々の隙間に飛び込む関靖の姿に呆気にとられ、数瞬の後に漸く気付いた。
――嵌められた。このあたしが。
イラつきが込み上げて来て自然と口が引き裂かれる。
「やるじゃん、関靖。……顔良と文醜が着いたら伝えな。そのうち追いつくから自分が死なないように殲滅しつつ先に林道を抜けて公孫賛と趙雲の隊を追いかけ、見つけたら時間稼ぎと兵力消耗の襲撃程度に留めて着かず離れずを維持ってね。
大型の武器の二人じゃ木々の隙間の関靖は捕まえられないしあたしが直接行く。今回こっちの武器を使うから鎌は……お前が持ってて。五十人は関靖の捕縛の為に林へ突入、他の奴らは先行した部隊に倣って街道の敵兵を突撃殲滅、その後に林外で待機。行動開始っ!」
幾つもの御意、と上げられる返事を聞きながら大鎌を一人の兵に渡し、腰に据えてあった長い鉤爪を装着しつつ林の中に駆け込む。
散開させた兵達は見つければ合図を送ってくれるだろう。というより、関靖に殺される兵の悲鳴が合図になるから問題ない。
斗詩と猪々子は大丈夫。さすがに趙雲相手に直接挑みはしないはずだ。公孫賛の白馬義従は厄介だが遅れてくる猪々子が連れてる強弩部隊と行けば二人でも楽に抑え切れる。
問題は敵本隊に追いつくまでの時間だが、どれだけの兵がこの奇策に費やされているか分からないのでなんとも言えないか。
しかし……関靖すら捕えなければいけないのが痛い。殺す事が出来るのなら楽なのにそれも出来ないのがこの戦で一番の難所だった。
ここから関靖を亡き者にすると激情に駆られた公孫賛と趙雲は五分程度の割合で釣れるかもしれないが、先程の兵達のように特攻してきたならば服従させる事も出来ずに自
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ