明けに咲く牡丹の花
[12/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ず郭図によって追撃を続けるよう指示されたが、顔良隊と文醜隊の大破、さらにはそこかしこで決起した民の反乱によって追撃を諦める事となる。
一人の兵を捕えておいた張コウはその兵に関靖の髪留めを渡し、馬を渡して内密に公孫賛の元へと送り出す。
河北動乱の果てに莫大な兵と一人の少女は命を落とした。
しかし、白馬の王の片腕は、己が身を切ることによって確かに彼女を救いきった。
†
モニター越しに全てを見やる少女は落胆のため息をついていた。
「全てを救えるなんて出来るわけありませんか……まあ、この外史で死亡確率の一番高い公孫賛を救えた事象なので良しです。これでよりゼロ外史に近付けました」
彼女はすっと一つのデジタル数字が幾つも示されているメーターを取り出し、見つめること幾刻。
モニターの中で公孫軍が関所に到着すると幾つも同時に並んだ数字はゼロへと少しだけ近付いていく。
それを確かめてから、ふっと息を一つ漏らしてメーターを空間に溶け込ませた。
「さて、どれとの複合事象であるのか、それだけが問題です。何度も繰り返してやっと改変の方法が解き明かせたんですから正しい選択をしてくださいよ?」
にやりと笑った少女は戦場で血だるまになりながら駆け抜けるその男を見て笑みを深めた。
〜牡丹の願いは〜
天幕の中で膝を揃えて寝台の上に座る真っ赤な顔をした牡丹は立ちすくむ白蓮を見ていた。
もじもじと身を揺する様子は年頃の少女そのもので、白蓮は自分が男だったら堪らず襲い掛かっているだろうなどとくだらない考えが頭に浮かぶ。
「あの……白蓮様。その……えっとですね……なんというか……そんなに見つめられると恥ずかしいです」
尚も顔を紅く染め上げて彼女はぎゅっと目を瞑り、揃えた膝に両の手を乗せて震えはじめる。
「いや……すまない。私はこんな時どうすればいいんだ? というかどうしてこんな事になっているんだ!」
「白蓮様が寝台に座れって言ったんじゃないですか!」
「確かに言ったけどさ!」
口げんかのような言いあいを重ねていたが、白蓮は諦めたように寝台の牡丹の隣に腰を下ろす。
牡丹の心臓はこれでもかというくらいに跳ね上がり、熱っぽい視線で白蓮の事を見つめ始める。
その視線を受けた白蓮は顔を真っ赤に染め上げて、思考を巡らせるもこの後に何をすればいいのか全く分からなかった。
ふいに、牡丹は小さく噴き出した。明日が決死の戦場であるというのに白蓮の戸惑う姿があまりに面白くて、そしてあまりに可愛らしくて。
「ふふ、白蓮様の女の子の表情頂きました。ねぇ、白蓮様。そんなに緊張しなくてもいいです。私は星の言うような事を望んでいませんよ」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ