明けに咲く牡丹の花
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った。だが、それら全てを抑え込む。今は感情に任せる時では無いのだ。後々問い詰めようとも、あのクズならば上層部の権力を笠に知らぬ存ぜぬで押し通せてしまうだろう。
全てを諦め、関靖に近付くと虚ろな瞳で倒れ伏していた。息は短く速い。典型的な死に向かうモノの呼吸から分かるように、もう助からないし助けられない。
「苦しまないように止めを刺してあげる。最後に言い残す事は?」
謝る事など出来はしない。後悔も何もありはしない。ただ、死という残酷な事実が残るだけ。
込み上げてくるのは初めての感情だった。きっとこれが罪悪感というモノなのだろう。せめてこいつが何か残せるように、誰かに想いを伝えられるようにと、普段なら気にもしなかった事をしようと思ってしまった。
槍を引き抜き、仰向けに膝の上に乗せてあげた関靖の顔は……驚くことに満面の笑みを浮かべていた。その瞳は憎しみに染まらず、ただただ綺麗な透き通った色に光り輝いていた。
「ふ、ふふふ……私は、あのお方を逃がせたんですよ……死を選んだあのお方を救い出せたんです……ああ、でも、もう手伝えない。そういう事だったんですか……せっかく……ったのに」
理解出来たのは公孫賛を救い出せた事が嬉しいという感情だけ。
次第に小さくなっていく声、しかし尚も彼女は言葉を紡いでいた。
「……ごめんなさ……もう手伝えません……せっかく……のに……一人にしてしまいます。せめて……あなたの望む世界になりますように……」
最後の言葉は一粒の涙と共に紡がれた。紡がれずにいた声にならないモノも、唇の動きからその名が誰のモノかは分かった。
たった一つの祈りを聞き届けたのはあたしだけ。それを伝えられるのもあたししかいない。
泣き笑いの笑顔のままで関靖の身体全体から力が抜けて行く。
彼女の鼓動が弱まっていき、これ以上苦しまないようにと止めを刺す事も出来ずにただその光景を眺めていた。
動こうとしても、何かに縛り付けられるようにあたしの眼は関靖から逸らすことすら出来なかった。
最後の息が深く紡がれ、瞼が閉じられるその瞬間まで何も出来なかった。
張コウが遺体を運び出し、血に塗れた第二師団団長のその姿を見た林道の中にいる公孫軍の兵達が憎悪に染まり向かってくるも、張コウとその隊は向かい来る敵を殲滅した。
関靖が死んだ事を知った兵の内幾人かは逃げるように散らばっていったが、その瞳は怯えでは無く覚悟の光を宿していた為に、それがどのような状況に繋がるかを理解した張コウは本隊と顔良、文醜へと伝令を送る。これ以上の追撃は袁紹軍にとって多大な損害を被る、と。
両将軍の元への伝令は一歩間に合わず、怒りに身を任せた公孫賛と趙雲の逆撃によって甚大な被害を受けた。本隊は張コウの言葉を聞か
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