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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
記憶を綴じて ─フェンサー(T)─
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死祖との契約を交わした。
ならばなるほど、先ほどの槍の不発も頷ける。
既に心臓に命中している
(
・・・・・・・・・・・
)
という結果自体作りえないのだから、槍が当たるはずなどないのだ。
だがそんな事実よりも。
「貴様…………自分すら捨てたのか…………」
「そうだ。どれだけ哭いてもどんなに祈っても、奇跡なんてそうそう舞い降りやしない。
自分の手でそれを掴むために、オレは……自分の命を手放しちまったよ」
人を辞めてしまった青年。
大切な人を救う為だけに、悪を成し、魔に堕ちようと、ただその想いだけを願い続けた。
人外と化した今も変わらず、一人の少女の人並みの幸福だけを望み、その為に血塗れた道を走り続けている。
その少女にだけは、己の真実をひた隠しにしながら────
「けどオレはそこらの死徒とはモノが違うぜ。
死祖との正式な授血契約によって半死徒化し、もう一つの契約として不完全とはいえ、聖杯の第三法によって肉体と魂が劣化することのないオレは、二十七祖にすら並ぶ
不死者
(
イモータル
)
だ」
「おまえは…………それほどまでに…………」
人間であった頃の彼を知っているからこそ、衝撃は大きかった。
青年自身が望んだとはいえ、それが周りを幸せにするかといえばそうではないだろう。
自分が言えたことではないが、彼が傍に居てやることで救われるものがあったのではないのか。
それも今となっては遅い。
たとえ周りにどう思われようと、彼らは自分が信じた道を進み続けるだけなのだから。
「────────」
赤い騎士は詠唱を開始する。
起動呪文ではなく、自然干渉の呪文でもなく、自己に働きかける呪文。
己の裡に在る無限の剣を内包した世界を、現実へと侵食させる大禁呪だ。
「いいのか? おまえは製る者、オレは担う者。
聖遺物である武器の扱いを競うのなら、俺の右に出るものはいない」
「────────」
詠唱は続く。
結果が解りきっているとしても、赤い騎士はこうするしかない。
青年の手にある蒼槍は、最上級の神具。
数種の概念を内包し、ほとんどの宝具を真っ向から叩き潰せる最強の槍。
その槍だけでも脅威的だが、青年の真価は別にある。
あらゆる神話に登場する武具。
伝承、伝説に語られしかの奇跡を、完全に実現させるのが漆黒の騎士の能力だ。
ならばこの力を使うということは、敵にも無限の武器を与えることに他ならない。
しかしそれでも、普通に戦ってはあの蒼槍に敗れるしかないのだ。
僅かでも対抗する手段を増やすために、彼は固有結界を使わざるを得なかった。
そして────世界は侵食された。
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