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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
記憶を綴じて ─フェンサー(T)─
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もこの漆黒の騎士の在り方を、ただ認めるしかなかった。
自身とは正反対の彼をどれだけ否定したとしても、赤い騎士が置き去りにした愛する者たちを守ってくれたのは、他ならぬこの青年なのだ。
「そういうおまえは、あの子を救えたのか?」
「ああ、一応はな。けど、やっぱり不完全らしくてね。
50万じゃあ足りなくてな、杯を完全に完成させるには総計70万の魂が必要だってさ」
「それでこうして戦場を歩き回って魂を集めているわけか」
「自分から殺すことはしない。オレは死んだものを再利用するだけだ」
正反対の二人とはいえ、彼らは互いを罵ることなど出来ない。
やり方は違うとはいえど、己が殺人者であるという事実は変わらないのだ。
認め合いながらも反発し合う。
二律背反の同一存在。
それが二人の騎士が持つ、互いへの聖痕だ。
「いつか言ったな。おまえが人々を守る
正義の味方
(
ヒーロー
)
なら────オレは愛する者の、
唯一人の為の味方
(
ダークヒーロー
)
でいいって」
「……………………」
「────それが俺たちの間にある、絶対的な差だ」
赤い騎士が構える。その手には黒白の双剣ではなく、朱色の槍が握られている。
初撃にて全力。一撃決殺を図るため、赤い騎士は魔術回路を
全開稼働
(
バーストアップ
)
させる。
前回に敗北したときには扱えなかった術を、惜しげもなくここに解放する。
その槍の真名を以て、漆黒の騎士を貫き殺す……!
「
刺し穿つ死棘の槍
(
ゲイ・ボルク
)
────────!!」
中段から放たれた槍は物理法則を無視した軌跡を残し、漆黒の騎士の胸へと吸い込まれる。
かの槍こそは、因果を逆転させる朱の魔槍。
既に命中したという結果を先に作り出し、過程を書き換える必中の槍である。
しかしそれを──────
「それで、もう終いか?」
「な……!?」
────いとも容易く、青年は躱してみせた。
解せないどころの話ではない。
一度標的を捉えたならば、たとえ地球の裏側へ逃れようと命中する魔の一撃を躱すなどと、尋常な事態ではない────!
「さあ、答え合わせだ。何で当たらなかったのかって顔してるな」
「っ…………」
「簡単だよ…………俺にはもう、心臓なんてものはないからな」
「なに……?」
心臓がないとはどういうことか。
訝しむ赤い騎士に、青年は自身の胸元を肌蹴て見せた。
そこには大きな傷痕。
間違いなく即死したであろう傷痕を残して、青年の胸には本来あるはずの鼓動の音が無かった。
「かつて聖杯を得る代償にな。心臓を明け渡したのさ。黒き血と支配、朱き月の下、黒の吸血姫との契約を」
心臓を代価に、
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