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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
記憶を綴じて ─フェンサー(T)─
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と戦場に、今まさに両軍が激突しようとするその場所に、はためく赤い外套に身を包んだ騎士の姿があった。
「…………どこまでいっても、争いは無くならないのか」
手に黒白の双剣を携え、なるべく多くの人間を救うために騎士は戦場に立っていた。
無謀どころの話ではない。
勇気は蛮勇、無謀とは違うとよく言われるが、これはそれすらも通り越してただの自殺でしかない。
しかし事実として、彼はその目的の為だけに存在していた。
言葉は通じず、和解などありえない。
どちらか一方の全滅を以てしか決着がつかぬならば、両軍に撤退せざるを得ない損耗を与えて退かせるだけ。
軍事的観点から、人員の二割に損害が出た場合それは敗戦であり、撤退させるのが普通だ。
ならば理論値だけでいえば、最小限の犠牲でこの場の戦争は終わらせられる。
だがそれを個人で為そうとするなど、第三者から見れば狂気の沙汰だ。
それでも赤い騎士は、戦場へと歩を進めていく。
そう、そんなもので止まれるのなら──────彼はここまで来れはしなかったのだから。
そうして両軍の先発隊が最初に接敵するであろう場所に辿り着いた。
未だ静寂を保つ其処には、既に一人の敵が待ち構えていた。
「よう、久しぶり。おまえはまだそんな事やってるのか……損な性格だな」
「フン、いつかはまた相見えることになるとは思っていたが……存外に早かったな」
対峙する二人の騎士。
蒼槍を携え、右腕に黒鋼、左腕に魔銃を装備した、黒衣を纏う漆黒の騎士。
幽鬼のように顔面は蒼白だが、漲る魔力は成熟した魔術師の数十倍。
深緑と深紅のオッドアイから放たれる殺気は、それだけで空気ごと身を切り裂きそうなほどに鋭い。
赤い騎士は、それを平然と受け流す。
「大人しくしていてくれないか? 後、17万の魂で器が満ちる。それで杯は完成するんだ。
勝手に争い合って死んでいく愚者に、わざわざ手を差し伸べることもないだろ?」
「私がどういうモノかは、おまえもよく知っているだろう? そんな空の言葉で、私が止まるはずがない」
交わす言葉に意味はない。
元よりこの二人は、出会ってしまった時点で手遅れなのだ。
「そうかい。おまえが愛する者、おまえを愛する者総てを置き去りにして駆け抜けた先…………求める最果ては見えたか?」
「いいや、未だ彷徨っている途中だよ。この懊悩は私が私で有る限り、一生付いて回るものだ」
「……なるほど」
漆黒の騎士は苦笑する。
彼は赤い騎士の在り方を肯定も否定もしない。
ただ自分とは正反対なその在り方を、一つの形として認めるだけだった。
逆もまた然り。
赤い騎士
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