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東方虚空伝
第三章   [ 花 鳥 風 月 ]
三十一話 七枷の郷
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?何か付いてる?」

「いや何も付いてないよ、諏訪子は今日も可愛いなーと思って」

 僕がそう言うと諏訪子はケラケラ笑いながら、

「ん〜ありがと♪じゃぁさ可愛いあたしにお団子の御代わり頂戴」

 と言って空になった皿を差し出してくる。というか僕はまだ一個も食べていないんだけど。

「しょうがないな、秀介(しゅうすけ)!団子五本追加で!」

 僕がそう声をかけると店の奥の方から団子を載せた皿を持った青年が現れる。名は秀介と言いこの茶店 畳屋(たたみや)の店主の息子で歳は確か十八。刈上げの黒髪、黒い瞳で眼鏡をかけており知的な感じがするがそんな事は全く無い。
 因みに茶店なのに店名が畳屋なのは先代の店主、秀介のじいちゃんが四十年位前に店を建て直す際「店名を意外性の在るものに変えてみたい」と言い出し僕に相談してきたのだ。だから意外性を重視し『畳屋』と僕達で決めた。本人は満足したまま四年程前に他界したが僕は少々後悔しているのは内緒だ。

「…虚空様…ウチの店でイチャつかないでもらえませんかね!え?何?嫌がらせか何かですか!ああん!」

 敵意剥き出しの言葉と視線を僕にぶつけてくる秀介から団子の皿を受け取った諏訪子が、

「どったの秀介?何か機嫌悪いね?」

 と問いかけたが俊介は何も答えず踵を返し店の奥に戻ろうとするその背中に紫が声をかけた。

「栞に相手にしてもらえなくて八つ当たりしてるのよね♪昨日は花なんて贈って健気だったわ♪」

「どうして知ってるんですか!見てたんですか!」

 物凄い勢いで振り返りそんな叫びを上げる秀介を紫と諏訪子はニヤニヤしながらからかい始めた。

「なーんだそんな理由だったの♪いやー青春だね〜♪」

「お菓子の差し入れしたり、あんなに貢いでいるのに邪険にされて可哀想な秀介♪」

「み、貢いでいる訳じゃありませんよ!」

「頑張れ青少年!応援してあげるよ♪」

 紫と諏訪子にいじられている俊介を眺めながらそれを肴に団子を口に運ぶ。二人に散々にからかわれ遂には顔を真っ赤にして頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。純情だね〜。
 そんな風に秀介で遊んでいると不意に表の方が騒がしくなったので視線を向けてみると、通りの向こうから十歳位の男の子三人が必死の形相で何かから逃げており、その後ろの方を確認すると二メートル以上はある黒い熊が四足で地面を蹴りながら駆けて来る。
 その三人は僕達に気付くと縋る様な表情を浮かべて此方に駆け寄り僕の後ろに隠れながら声を荒げ救いを求め始めた。

「七枷様助けて!」

 と言うのが黒目で黒髪のおかっぱ頭をした秀介の弟の俊平(しゅんぺい)

「食べられちゃうよー!」

 と情けない事を言っているのが茶色い瞳をした坊主頭に丸眼鏡をか
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