第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
三十一話 七枷の郷
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主は最後にこう付け足した。
「そうそう諏訪の都は今は親しみを込めてこう呼ばれていますよ、“七枷の郷”と」
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七枷神社の社務所の廊下を一人の巫女が走っていた。一般の巫女と違い青い袴が特徴的な郷の皆からは“風祝”と呼ばれる七枷の巫女である。名の由来は祭神である虚空が自由奔放で掴み所が無い、風や雲みたいな人物だった為それに使える巫女を“風を纏める者”と虚空自身が皮肉ったのが始まりらしい。
しかし年月を重ね、今では神奈子の風の祝福を受ける者として認知されている。理由は簡単、虚空が祭事の殆どを神奈子達に任せているからだ。今巫女が廊下を走っているのも、その怠け者である虚空を探している為である。
「虚空様!!何処ですか!!大人しく出てきなさい!!今なら拳骨で許してあげますよ!!」
仕える者にしては少々過激な発言をしながら巫女は廊下をひた走る。緑色のセミロングの髪をポニーテールにして、髪と同じ色の瞳にはやる気が満ちていた。身長は百五十位で歳は三ヶ月前に十七になったばかり。その時に母から巫女を受け継いだのだ。
母親は少々おっとりしていた為、祭事をサボる虚空にあまり強く言ったりはしなかったが自分は違う。必ずあのサボり魔を更正し真っ当な?祭神にするという目標を立てている。
「栞虚空は居たかい?」
巫女・東風谷栞にそう声をかけた人物はこの七枷神社の神の一柱、八坂神奈子。普段から愛用している白い長袖の上に赤い半袖の服と臙脂色のロングスカートに身を包み、胸元に直径十五センチ程の鏡を付け、その背には円状に編まれた注連縄を背負っている、祭事の際の正装の様なものだ。
胸元の鏡は『真澄の鏡』と言いこの神社が諏訪大社と呼ばれていた頃に納められた宝物で背中の注連縄は蛇を模した物であるらしく本人曰く、「宝物の鏡を抱き蛇を従えている様に見せる事で大和が諏訪を下した様を表している」との事。
余談だがこの格好を始めた時に諏訪子は「変な格好!」と大笑いしたが、説明を聞いた瞬間怒り出し神奈子と大喧嘩をした。理由は簡単で諏訪大戦の折、諏訪子と神奈子は殆ど刃を交えておらず正確に事実を言えば二人とも虚空に負けた事になる。諏訪子としては神奈子に負けたみたいな扱いをされるのが我慢出来なかったようだ。
「申し訳ございません神奈子様!逃げられたみたいです」
栞は本当に悔しそうに神奈子に頭を下げ謝罪するが、当の神奈子は「まぁ気にする事じゃないよ」と栞の頭を撫でながら笑っていた。そんな神奈子の態度に栞の怒りの矛先は虚空から神奈子へと変わる。
「神奈子様達は虚空様に御甘いです!甘すぎます!甘甘です!紫様
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